04-05.最後に嗤う者
「戦況は絶望的だな」
ね~。困っちゃったね~。
まさか本当にアルバお姉ちゃん一人で戦ってるとはね~。
びっくりだよね~。
『呑気にしてる場合じゃないのだわ。いくらアルバが強いからって無理があるのだわ』
だよね~。実質的に先代魔王の勢力が全部敵に回るようなものだしね~。
「ねえ、お姉ちゃん。どうしてこんなに追い詰められるまで放っといたの?」
「あはは~♪ 参ったねぇ~♪」
全然参ってなさそうなんだよなぁ~。
あれだよね。お姉ちゃんがここまで勝ち残ってきたのは、単純に強すぎるからなんだよね。個としてさ。
だからこそ敵対勢力からすれば、わざわざ危険を冒してまで先に倒す必要が無かったんだよね。
確かに強いから戦えば犠牲は避けられない。けれどだからといって、お姉ちゃんが本当に脅威だったわけじゃない。なにせお姉ちゃんは一人だったから。魔王とはその名の通り王様だから。一人の強さだけで勝ち取れるものではないから。王として配下を率いるのも大切な才能だから。
皆わかってたんだ。他の魔王候補者たちは。
お姉ちゃんとは最後に戦うので構わない。その前に他の候補者たちを潰していくべきだ。むしろ個として強いお姉ちゃんは、最後に倒すことにこそ価値があるのだ。
魔王対勇者の構図と同じだ。最後の一人はただ準備を整えて待ち構えていればいい。最高の戦力を揃えてお姉ちゃんの挑戦を受けるのだ。お姉ちゃんを新生魔王軍お披露目のデモンストレーションに利用するつもりだったのだ。
だから今までお姉ちゃんは無事でいられたのだ。そうでなければ真っ先に潰されていた筈だ。複数の候補者たちが徒党を組んで挑んできていた筈なのだ。
つまりお姉ちゃんは舐められていた。
意図的に泳がされていた。この状況に至るまで。
大勢の民が盛り上がるこのタイミングだって重要だ。
序盤は勢力が多いから王都は危険地帯と化す。だから私たちも来られなかった。それはこの王都の民だって同じだ。今みたいにお祭りムードになったのは、勢力の数が減り、小競り合いが落ち着いたからだ。大勢が決したからだ。
お姉ちゃんは敵対勢力を潰しても、何故か自分から仲間を増やしていくことはなかったそうだ。
逆に自ら志願した魔族たちは迎え入れていたみたいだけど、大して相手もしていなかったから、結局黒獅子に奪われちゃったらしい。
「お姉ちゃん。魔族は嫌い?」
「あはは~♪」
ルクス君を奪った魔族が憎い? だからまともに管理もしていなかったの? もしかして魔王になりたいのは復讐のためなの? ルクス君の死を無駄にしないっていうのは建前なの? 彼の死を言い訳に使ったの?
『ナズナ』
わかってる。わかってるよ。ティア。
『怒ってはダメなのだわ』
わかってるってば!!
『……ごめんなさい』
……大丈夫。わかってる。本当だよ。
お姉ちゃんにやる気が無かっただなんて思っているわけじゃない。形振り構わず動くべきだったと言いたいわけじゃない。暴れる口実が欲しかっただけだなんて思ってない。
思ってないんだよ。本当に。
『……そうなのだわ』
……ごめんね、ティア。
ありがとう。やっぱり少し冷静になれたよ。
『……うん』
ふふ♪ 大丈夫大丈夫♪ 私たちが力を合わせればいくらでも巻き返せるよ♪
『そうなのだわ』
ティアも知恵を貸してね♪ それと偵察は任せたぜ♪
『もちろんなのだわ。けれど必要なさそうなのだわ』
ね♪ ユーキちゃんの情報収集能力には驚いたよね♪
『あっという間に集めてしまったのだわ』
ユーキちゃんにはまだ部下もいるみたいだね♪
『もしかしたら四天王……』
ダメ。探らないよ。ユーキちゃんは私の仲間。私の家族。勇者ルクス君の仇一味とは何の関係もないの。そういうことにしておいて。
『了解したのだわ』
ふふ♪ あんがと♪
『けれど』
わかってる。だからこそ私に出来ることもあるんだよ。
お姉ちゃんが魔族を許せないなら。魔族を配下として信頼出来ないなら。……私が代わりに務めるよ。ユーキちゃんにも手伝ってもらうよ。
でなきゃ魔王にはなれないからね。だって魔王は魔族の王様なんだから。私がお姉ちゃんと魔族の間に入るよ。
お姉ちゃんがやっぱり復讐したいって言うならそれでもいい。そのための覚悟は私がする。一時的に魔族と手を組んででも、ルクス君の仇討ちを成し遂げるよ。お姉ちゃんに背負えないものは私が背負ってあげる。今のお姉ちゃんを中途半端だと罵るくらいなら、私が埋めてあげれば済む話しだよ。
大丈夫。私は無敵だから。どんな重荷を背負ったって潰れることはないんだから。
『わたくしも背負うのだわ』
ありがとう、ティア♪ お願いね♪




