04-01.カルチャーショック
領主様のお陰で国境までは快適な旅だった。
そこから国境を越えて、私たちは魔族領に踏み込んだ。
……のは、数週間前。
私たちは国境から程近い、とある小さな村で、足止めをくらっていた。
「……討たれた? 魔王様が?」
「……勇者と? 相打ち?」
その噂を耳にして、頭が真っ白になった。
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『ナズナ。少しくらい休むのだわ』
……うん。そうだね。
『……まだ……決まったわけではないのだわ』
……そうかもね。
『気になるなら王都に行ってみるのだわ』
今はダメだってさ。新しい魔王を決めるための継承争い中なんだって。この期間の最初の内は危険なんだってさ。候補が絞られるとそうでもないらしいんだけど。
『ナズナには関係ないのだわ。どんな危険もへっちゃらなのだわ』
でもほら。ユーキちゃんは前王の関係者っぽいし。それに騎士様は……ルクス君たちの仲間だから。
……そもそも私たち人間だしさ。魔族側からしたら別に人間が紛れてても気にならないっぽいけども。意外と普通に暮らしてるんだよね。こっちでも。
『……ナズナ』
大丈夫だよ。私は平気。
『……わたくしが気になるのだわ』
……そっか。なら行くしかないかぁ。
『行って決着をつけるのだわ』
厳しいね。
『その方がナズナは喜ぶのだわ』
まるで私がマゾヒストみたいに。
『似たようなものなのだわ』
ひどい……。
『違うと言うなら今すぐ逃げ出すべきなのだわ』
それはできないよ。
『ほらやっぱりなのだわ』
厳しい……。けどありがとう。
『わたくしは我儘を言っただけなのだわ。ナズナを蔑ろにして自分の欲望を通そうとしているだけなのだわ』
はいはい♪ わかってるってば♪
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「はい。ワタシも同行します」
「本当に良いの? 危険かもしれないよ?」
「覚悟の上です」
ユーキちゃん……。
「ユーキ。その前に話すべきことがある」
騎士様が口を開いた。
「私は勇者パーティーの仲間だ。魔王を討った仇だ」
うわお。ストレート。
「……えっと? それが?」
「私にぶつけるがいい」
「……? 何をですか?」
え……?
「恨みがあろう」
「恨み? ……ああ。それは人間の考え方ですね」
え? どゆこと?
「誤解しないでください。もちろん魔族が恨みを抱かぬわけではありません」
……だよね。
「魔王様を個人的に敬愛する者ならば強い恨みも抱くでしょう」
そこがそもそも違うの? 魔王様の命で人間の奴隷にまでなったくらいなのに?
「しかし魔王様は望まぬでしょう」
……優しいってこと?
「魔王とは力ある者の称号です。力を証明出来ぬ者に魔王を名乗る資格はありません」
負けたから? もう誰も尊敬してないってこと?
「魔王様は覚悟の上で勇者の挑戦を受けたのです。勇者を打倒し、力を証明する事こそ一人前の魔王である証なのです」
……つまり?
「魔王国にとって、勇者の挑戦はある種のイベントです。恒例行事です。むしろ感謝すらしているのです」
えぇ……。
「……ならば何のために」
「勇者の存在意義は知りません。それは人族側の都合です。ただ言えるのは、魔王様一人を暗殺したところで魔王国は崩れません。またすぐに次の魔王様が選出されます」
……そんな。
ならルクス君は……。
「……ナズナ? 泣いているのですか?」
……。
「……そんな筈ないよ」
「どういう意味ですか?」
「……だってゼルガディアは本気だった。本気で勇者パーティーを潰すつもりだった」
わざわざ罠にかけてまで……。
「彼と会ったことがあるのですね。それは魔王様への挑戦権を獲得するためです」
「……挑戦権?」
「勇者を討ち取った者には、魔王様に挑む権利が与えられます。そして勝てば新たな魔王となれるのです。そういうしきたりです」
……。
「魔王軍が川を越えてまで攻めぬのも……侵攻範囲に限りを設けているのも似たような理由か?」
「ええ。人族を滅ぼすわけにもいきませんから」
……。
「……ナズナ?」
……。




