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不可侵少女は触れ合いたい  作者: こみやし
03.騎士と悪役の再出発

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03-05.優しい残酷


 夜遅く。ふと目が覚めた。



 そろそろ騎士様と交代しなきゃ。


 そんなことを思いながら、まぶたを擦る。


 ……あれ? ……何か足りない? ……馬車は?



「騎士様! 騎士様!! って!? 寝てるし!!」


 おいこら!! 交代で見張ろうって言ったでしょぉ!!


 気にせず休めとか言ってたじゃん! 私なんかに見張りは任せられないとかカッコつけてたじゃん!!



「騎士様! 騎士様! いなくなっちゃった! 皆いなくなっちゃったよぉ!!」


『違うのだわーー! 騎士様は眠らされてるのだわーー!』


 ティア!? 遠っ!? 今までどこに!?


『追っかけてたのだわ! ナズナが起きなかったのだわ!』


 私もやらかしてた!?



『いいから騎士様を起こすのだわ! ちょっとやそっとじゃ起きないから乱暴に起こすのだわ!』


 よしきた! せいやー!!



「……zzz」


『全然ダメダメなのだわ! 頭使うのだわ!』


 くっ! 私の腕力が足りないばっかりに!


『鼻に指でも突っ込んでやるのだわ!』


 そんなこと出来ないよ!?


『ならキスしてやるのだわ! 相場が決まってるのだわ!』


 目的変わってない!?



「……くっ~ぅ~」


 魘されてる!? 騎士様魘されてるよ!


 まさか悪夢でも見せられてる!? おのれ魔族! 助けてやった恩義をなんと心得る!! 命があっただけ温情? だよね! あの子たちが受けた苦痛を考えればね! ごめんなさい! 人類を代表して謝罪します! だから呪いはやめたげて!! 騎士様良い人だからぁ!!


『パニクってる場合じゃないのだわ!!』


 そうだった!!



「ええい! ままよ!!」




----------------------




「……」


「……」


 気まずい……。



「……騎士様」


「……なんだ」


 ……気まずい。



「……追っかけたい」


「無茶を言うな。向こうは馬車だ」


「けどあんな身体で……」


「魔族の生命力ならば問題は無い。だからあのような運搬方法がまかり通るのだ」


 そんなスポンジみたいな……。



「けど……」


 ガサゴソ。


「「!?」」



「う……うぅ……」


 誰かいる!?



『まだ生きてるのだわ!!』


 真っ先に動いて覗き込んだティアが慌てて手招きしている。



「おい待て!」


 騎士様の静止を手で制して、私も茂みの中を覗き込む。



「騎士様。手伝って」


 茂みの中には、この子と僅かな食料だけが隠されていた。



「随分と冷静な判断だな」


 もしかしたら意識を失っていなかった子がいたのかもね。だから騎士様は助かったのかも。私たちが彼女たちに何をしたのか知っていたのかも。



「冷静で冷酷だね。この子だけは救えないと判断したんだ」


 あの子たちは満身創痍だ。魔族領に逃げ帰れるのかもわからない。だからどうしようもない積荷だけは抱え込めなかった。僅かな食料はせめてもの罪滅ぼしなのかもしれない。



「騎士様。町に行こう」


「無謀だ」


「それでもだよ。この子を助けよう」


「魔族を治療する医者がどこにいる。だいたい検問はどうやって越えるつもりだ」


「なんとかして」


「無茶を言うな」


「とにかく手を貸して。先ずはこの子を火の側へ」


 騎士様の手も借りて、少女の身体を茂みから運び出し、横たえる。


 少女は苦しげな息遣いを続けている。あの子たちは良かれと思って隠したのかもしれないけど、そのせいで身体が冷えきってしまった。一度は落ち着いた容態も酷くなっている。


 ……あれ? ……違う。こんな傷は無かった。そうだ。ここまで酷くなんてなかった筈だ。ただ衰弱していただけだ。


 明らかにこの傷は先程付いたばかりのものだ。まだ塞がってすらいない。


 もちろん騎士様の剣によるものなんかじゃない。


 仲間割れ? あんなボロボロの子たちが?


『騎士様を庇ったのだわ』


 ……そっか。ティアは見てたんだね。一部始終を。


『最初に一人が騎士様を眠らせたのだわ。次にその子と二人で他の子たちを馬車に積み込んでいったのだわ。それから口論になったのだわ。もう一人の子はどうしても許せなかったのだわ』


 ……優しい子たちだったんだね。二人とも。


 結局そのもう一人も騎士様にトドメは刺さず、この子にも食料を残していったくらいだ。


 怪我をさせてしまったのは本当に衝動的だったのだろう。本意ではなかった筈だ。



「騎士様。この子は恩人だよ。この子がいなかったら騎士様は殺されていたんだよ」


「……元はと言えば我々が救ったのだ」


「酷いことをしたのは人間だ」


「人類と魔族は敵だ」


「それでも許し合えると証明してくれたんだよ。この子は」


「……だとしてもだ。私がトリスティアを許すことはない」


「ありがとう。騎士様」

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