01-02.根無し草の生活事情
「着いた~~~~~~!」
ようやくだ。随分と時間が掛かってしまった。
森で迷子になったのだ。崖上から見た時には町までもうすぐだと思っていたけど、案外と遠かったのだ。
けれどそれだけじゃない。
『ご苦労さまなのだわ♪』
だいたいティアのせいだけどね。
『心外なのだわ♪』
この案内役は信用ならない。折角背後霊なんだからと、空から方角を見てもらっても、興味の赴くままに別の道を指し示してしまうのだ。
けれど従わないわけにもいかない。ティアは必ず最後には目的地に連れて行ってくれるから。そこは信頼してるから。
『ナズナの願いは何でも叶えるのだわ♪』
なら次は真っ直ぐ道案内をお願いします。
『心得たのだわ♪』
嘘ばっかり。
まあいいや。早く宿探そうよ。それから手持ちも心許なくなってきたから、賭場でも探して資金稼ぎも……いかんいかん。そろそろ真っ当に働かなきゃ。いつまでも根無し草みたいな生活もしてられないし。
どこかで落ち着いて平和に暮らすのが私の夢なのだ。何故だか上手くいくことはないのだけども。
とにかく宿を取って休みながら考えよう。この町は中々の規模だ。仕事だって見つかる筈だ。冒険者は向いていないけど、ウエイトレスとかならいくらでも。きっと。たぶん。
『案内するのだわ♪』
出来れば可愛い看板娘のいる宿屋とかがいいかも♪
『任せておくのだわ♪ ナズナの好みはバッチリ把握しているのだわ♪』
今度こそ真っ直ぐ案内してよ。
『がってんなのだわ♪』
本当に頼むよ。もうへとへとなんだから。
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「あ♪ おはようございます♪ ナズナさん♪ お仕事見つかりました?」
「それがね~。聞いてよ、ルルナちゃ~ん~」
「また失敗したんですね。今度は何をやらかしたんです?」
「違うんだよ~。私悪くないんだよ~」
「はいはい。聞いてあげますから」
「試しにって働いてみたんだけどね~。客がね~。お尻触ろうとしてきてね~。けど私ってば強いからさ。ちょろっと回避したわけなんよ~」
「それで喧嘩しちゃったんですか?」
「喧嘩なんかしてないよ~。因縁付けられただけだよ~」
「強いって嘘ですよね? ナズナさん鈍臭いですよね?」
ひどい……。
「回避しようとして料理ぶち撒けちゃったとか?」
なんでわかるし……。
「混乱している内に酒場全体を巻き込んだ大乱闘に発展?」
えすぱーか!?
「それでクビになったんですね」
「はい……ご想像の通りですぅ……」
凄いぞこの看板娘! 私の背後霊より優秀かもしれない!
『酷いのだわ!』
「なんかアドバイスない~?」
「我慢です♪」
『次があるのだわ♪』
どっこいだな。ギリ勝ったか?
『ついでにもう一つアドバイスなのだわ♪ 愛しの騎士様が追っかけて来たのだわ♪』
まじかよ。おい。
『物陰から覗いているのだわ♪』
流石にここで仕掛けるつもりはないか。あの森みたいに更地になっても困るだろうし。
「ちょっくら出かけてくるね」
「今日こそ頑張ってください♪」
頑張ってお金稼いでくるよ。そろそろ宿代も危ないし。
また賭場行くしかないのかぁ~。ああいう場所の空気って慣れないんだよなぁ~。
けどティアのお陰で負け無しだもんな~。もちろん種目はちゃんと選ばないとだけども。引き際も肝心だ。あんまり荒稼ぎすると怖いお兄さんたちに囲まれちゃうからね。
『ちゃんと付いて来ているのだわ♪』
ふふふ♪ 私には万が一のボディーガードもついてるもんね♪ 私に暴れて欲しくなければ精々守ってくれたまえ♪
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「よぉよぉ姉ちゃんよぉ?」
ガクブル……。
「おめえ、やったろ」
「(フルフル)」
「あぁん?」
「……やって……ません……イカサマ……なんて」
「しらばっくれてんじゃねえぞ!!」
「ひぃっ!?」
「ちぃ~っと奥で話聞かせてもらおうか」
ヤバイヤバイヤバイ!!
なんで教えてくれなかったのさ! ティア!!
いつもなら引き際はティアが判断してくれてたじゃん!!
『興が乗りすぎたのだわ♪』
少しは悪びれてよぉ!?
『ごめん♪ なのだわ♪』
ティア! 逃げる方法!
『いつもの流れなのだわ♪』
ダメだこれ! 騎士様! 助けて! 私はここにいます!
「おら! ちんたらすんじゃねえ!」
ひぃ~~~~!!!
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何をやっているんだあいつは……。
「おうおう。騎士様がこんなところに何のようでぇ?」
「べっぴんさんが一人で来るとこじゃねえぞ♪」
「ギャッハッハ♪」
……私も何をしているのだろうか。
「おっ♪ やる気か♪」
「女一人に何が出来るってんだ♪」
……しかしマズいな。こんな場所では。やむを得まい。
「邪魔だ!」
「「「ぐぼあっ!?」」」
立ち塞がるチンピラ共。手早く一人を倒し、そのまま二人目、三人目と流れるように打ち据えていく。
「なんだ貴様!!」
奥から屈強な大男が現れた。
「先程の女性を即刻解放せよ!」
「てめぇが保護者か! 見ねえ格好だ! ここらの騎士様じゃねえな! 構わねえ! 者共!! ひっ捕らえろ!」
奥からゾロゾロと現れる。次から次へと溢れていく。
どうやらこの賭博場は見た目通りの施設ではないらしい。どこぞの大悪党の根城に攻め込んでしまったようだ。気づかぬ内に。……良いだろう。相手にとって不足無し!
「はぁっ!!!」
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……数秒後。
「くっ! 離せ!!」
「なんだこいつ。てんで弱えじゃねえか」
地に組み伏せられる女騎士。命より大切な剣も取り上げられてしまった。
「連れて行け」
あらあら。いつものこととはいえ、情けないのだわ。まだまだナズナの隣は任せられないのだわ。




