03-02.ささやかな望み
「騎士様♪ 騎士様♪」
「……なんだ? ナズナ?」
ふふ♪ 最近ようやくまた呼んでくれるようになったぜ♪
なんだかんだ騎士様はとっても優しい人なんだぜ♪
「ほら見て♪ あれあれ♪」
「……行商か」
「だよねだよね♪ てことはさ♪ きっとこの先行ったら町があるんだよ! 行こ♪ 乗せてもらおうよ♪」
久しぶりの町だぁ♪ 宿に泊まれるぞい♪
「……」
ありゃ? お悩み中だ。
やっぱり私を町に連れて行くのは怖いのかしら?
「騎士様? 情報を集めるには町に行かないとだよ?」
「……うむ」
踏ん切りがつかないかぁ。
「騎士様が私を守ってくれれば、私は暴走なんてしないんだよ?」
「……その話を信じる根拠は無い」
流石に無茶かぁ。
結局トリスティアはあれから一度も出てきていない。
だからって私の安全性が保証されたわけじゃない。いつ起爆するかもわからない爆弾だ。町中どころか人の近くに持っていきたくないのは当然だ。
「なら二人きりで過ごそっか♪ 私はそれでもいいよ♪ このまま二人でひっそり生きていくのもいいよね♪ 五年か、十年か。それくらいすれば信じてもらえるかな? なんなら一生でもいいよ♪ 騎士様が一緒にいてくれるなら私は二度と町に行けなくても文句なんて言わないよ♪ でもずっと縛っちゃうのは悪いかな。十日に一度……ううん。もっと少なくてもいい。会いに来て。私はもう二度と町には近づかないからさ。騎士様が会いに来てくれることだけを楽しみに森で暮らすからさ。どうかな? 約束してくれる?」
「勝手に話を進めるな」
あら? 怒らせちゃった?
「行くぞ」
「え? そっちに? 私も一緒に?」
「当たり前だ。私はお前を見張らねばならん」
そう言いながらも騎士様は私に背を向けて歩き出した。
私がついて来ないとは微塵も考えていないようだ。
「なんのつもりだ」
手を握ったら振り払われてしまった。
「自慢じゃないけど私運動神経良くないんだよ。あそこまで急ぐなら手を握っておいてほしいな。転んじゃうかもだし」
「ふざけるな」
ダメかぁ。
『……さっきのは本気なのかしら?』
え? 何が? 全部本気だよ?
『……』
ああ。そもそも忘れちゃうもんね。私から離れたら。
『……そうなのだわ』
確かに無茶だった。適当過ぎたね。ごめんちゃい。
『……』
も~。またそんな顔して~。
折角最近調子戻ってきてたのに。
わるかったよ。ごめんね、ティア。ティアにそんな顔をさせたくてゴネたわけじゃないんだよ。
『違うのだわ! あんなのゴネた内に入らないのだわ!』
もっと我儘になった方がいい?
『そうなのだわ! これ以上暴れてほしくないなら自分の機嫌を取れくらい言うべきなのだわ!!』
なるほど♪ ナイスアイディア♪
「ねえねえ♪ 騎士様♪」
「……なんだ?」
ちょっと警戒気味。
「私ね。誰かの手を握っていると安心できるの」
「……だからなんだ」
ちょっと苛立ち気味。
「ほら。私ってストレスが溜まるとよくないんだよ」
「……くっ」
ハッキリと苛立ちながら手を差し出してきた。
「ありがと♪ 大好きだよ♪ 騎士様♪」
「……やめろ」
そっぽを向いてしまった。けど手は引っ込めなかった。
ナズナちゃんはもちろん遠慮なんてしないんだぜい♪
ティアもありがとう♪ お陰でまた繋げたよ♪
『……わたくしも』
いつか絶対繋ごうね♪ 約束だ♪
『……見つけ出すのだわ。必ず』
うん♪ その意気だ♪
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「無愛想な騎士様だねぇ」
「あはは♪ ごめんね♪ おじさん♪」
「ナズナちゃんはあれだね。お嬢様らしくないねぇ」
「逃亡生活も長いからね♪」
「どんな悪いことしたんだい?」
「違うよ♪ ただの政治争いだよ♪」
「なるほどねぇ。お貴族様も大変だわ」
「でっしょ~♪」
行商のおじさんは私を御者台に座らせてくれた。
残念ながら騎士様が乗るスペースは無かった。加えて荷台は荷物で山盛りだ。そもそも騎士様は私から目を離せない。
結果、ゆっくり進む荷馬車の隣を騎士様が歩くことになったのだ。
折角手を繋げたのに、早くも放すことになってしまった。ちょー残念。
けど座らないのも不自然だもんね。折角誘ってくれたんだし。
名残惜しいけど少し我慢だ♪
「おじさんも長いの?」
「おうともさ♪ 後ろの荷物見たろ♪ こんな山積みで運べる行商なんてそりゃ珍しいもんさ♪」
「大ベテランさんだ♪ よっ♪ 日本一♪」
「ニッポンイチ? なんだいそれは?」
「ああ♪ ふふ♪ ごめんごめん♪ 故郷の掛け声なの♪ 国で一番♪ みたいな意味だよ♪」
「あっはっは♪ 嬉しいこと言ってくれるねぇ♪」
「ふふふ♪」
……あれ? そういえばおじさん一人なの? 護衛は?
『マズいのだわ!』
ティア? 荷車から出てきた? 覗いてみたの?
『逃げるのだわ! こいつ悪人なのだわ!』
えぇ!?




