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不可侵少女は触れ合いたい  作者: こみやし
03.騎士と悪役の再出発

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03-01.騎士と悪役の再出発


「どうぞ♪ 騎士様♪ お腹空いたでしょ♪」



「勝手に側を離れるな」


「ごめんね。心配掛けちゃった?」


「何を勘違いしている」


「わかってる。騎士様のことはちゃんとわかってるよ」


「……頂こう」


 なんだかんだと礼儀正しい騎士様だ♪


 騎士様は私の差し出した果実を受け取って、ほんの少し距離をとった。



 どうやら騎士様は、本当に全てを忘れてしまったようだ。


 より具体的に言うならば、半年程前、私がトリスティアの身体に転生した頃からの記憶の内、私に関する情報だけが抜け落ちてしまったらしい。


 トリスティアのことは覚えてる。ルクス君たちのことも。けど私のことだけが消え去ってしまった。


 今は私を殺す方法を求めて旅をしている。


 騎士様と二人でだ。


 もちろん私に殺されるつもりなんてない。



 ただ騎士様を説得する口実に利用しただけだ。騎士様もわりかしあっさりと納得してくれた。


 どっかに引き渡して、私を閉じ込めたって意味はない。騎士様はそのことをよくよく理解していた。



 だから常に私の側で見守ってくれて……もとい、見張ってくれている。


 私も騎士様の側から離れるつもりはない。騎士様が私を殺せる方法を見つけるまでに仲良くなれれば私の勝ちだ。


 ふっふっふ♪ たっぷりお食べ♪ 騎士様♪


 心をぶくぶく太らせて、私がいないと生きられないようにしてやるぜ♪



『……』


 もう。ティアったら。いつまでそんな顔してるの?


『……わたくしも食べてみたいのだわ』


 あ、そっちか。


 ごめんね、ティア。


 ティアに身体を与えてあげられたらいいのにね。


 そういうのを探してみるのも悪くないね♪


『……本当に旅を続けるつもりなのだわ?』


 やっぱり気にしてるんじゃん。


 もう。大丈夫だってば。


 ナズナちゃん強い子♪ 元気な子♪ これしきのことでへこたれたりなんてしないってば♪


『……うん』


 ティアは気にしいだなぁ~。


 どうにかして元気付けてあげられないものだろうか。



「行くぞ」


「もういいの? おかわりあるよ?」


「先を急ぐ」


「そんなに私を殺したい?」


「無論だ」


「ならさ♪ 修行してみるのはどうかな♪」


「修行だと?」


「騎士様がすっごく強くなれば、私を殺せちゃうかもしれないよ♪」


「……考えておこう」


「そっか♪ えへへ♪ ならお師匠様を見つけないとね♪」


「……」


 変な顔で見てる。


 結局騎士様は何も言わずに歩き出した。


 私の言動を訝しくは思っていても、それを気安く相談するような間柄じゃないもんね。


 だから騎士様はいっぱい考え続けている。


 私のことで頭がいっぱいなのだ♪ 四六時中♪



 私も騎士様の隣に並んで歩いていく。


 もちろん手を繋げるわけじゃない。特別に距離が近いわけでもない。けれど騎士様は私のことを意識している。どこへも逃げ出さないようにと、常に警戒を続けてくれている。


 それが堪らなく嬉しいのだ。私は。


 自分でも変な感性なのかなって思わなくはないけれど。


 でもさ。完全に無視されちゃうよりはずっといいよね。


 だから私は大丈夫。たとえ騎士様がもう一度私のことを忘れちゃったとしても、また思い出させれば済む話だもの。



 ただ一点。ルクス君たちのことは気がかりだ。


 騎士様は何も教えてくれなかった。ただその反応を見ながらちょいちょい探りを入れているだけだ。


 一時的に旅を共にしていた記憶があるのは間違いない。


 騎士様の性格を考えるなら、先ず間違いなく無事ではあるのだろう。それは信じられる。


 もしかしたらルクス君なら私のことを覚えていてくれるかもしれない。そんな期待も無くはない。彼も異世界転生者だからね。特別かもしれないよね。


 もちろん忘れている可能性も否定は出来ない。だから過度には期待しないでおこう。


 なあに心配は要らないよ。ルクス君たちはまたすぐ私と仲良くなってくれるもの。そう信じてる。


 だから今は旅を続けよう。


 そして出来ることなら私も強くなろう。


 今度は自分の力で皆と一緒に居られるように。



 騎士様だってそこらのチンピラよりは遥かに強い。もう少し仲良くなれたら戦い方を教えてもらおう。


 それで一緒にもっと強いお師匠様を探すんだ。


 本当はアルバお姉ちゃんに教われれば、言う事無しなんだけどね。仕方ない。今回は諦めよう。騎士様に合流するつもりが無いみたいだし。


 やっぱり後ろめたいのかな?


 それとも私を引き合わせたくないだけ?



 良いけどね。


 騎士様の中でもあの日々が大切なものだった証だもんね。


 たとえそこから私だけが抜け落ちてしまっても、騎士様が大切に想ってくれているという事実に私も救われるんだ。



 だからね。ティア。


 私は大丈夫。


 ティアがいて、騎士様がいて、私がいて。


 ルクス君、アルバお姉ちゃん、ブルーノさん。三人との思い出も私の中に残ってる。騎士様の中にだって残ってる。


 それだけで十分なんだよ。ティア。


 本当に本当だよ。だから泣かないで。笑っていて。


 いつまでも私の隣に居てね。ティア。


 大好きだよ♪ ティア♪

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