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不可侵少女は触れ合いたい  作者: こみやし
02.勇者一行と行き倒れ

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14/23

02-10.vs???


「がんばぇ~~~~~!!! おね~ちゃぁ~~~ん!!」



「はぁっ!!」


「ふんっ!!」


 拳と拳がぶつかり合う。


 一撃ごとに大気が揺れる。衝撃が地面すら震わせる。


 アルバお姉ちゃんと金獅子は熱戦を繰り広げている。


 両者一歩も引かぬ真っ向からの殴り合いだ。


 戦況はお姉ちゃんがやや優勢か。


 金獅子ゼルガディアも負けてはいない。


 手に汗握る白熱した試合展開だ。


『試合じゃないのだわ! 死合なのだわ! 真面目にやるのだわ!』


 そうだった!



「ルクス君! 騎士様は!?」


「引き返してもらったよ!」


 どっかですれ違っちゃったかぁ!


『あの騎士様なら心配は要らないのだわ! それより勇者を解放するのだわ!』


 うん!


 とは言えどうしたものか。ルクス君の身体は鋼鉄の鎖で縛られている。ブルーノさんも同じだ。



「ナズナ! 危ない!!」


「え? うわっ!?」


 突然現れた何者かに突き飛ばされた。


 いや。蹴り飛ばされたんだ。


 ゴロゴロと地面を転がされ、ルクス君の下から離される。



「妙な手応えですね」


 スーツを着たワンちゃんだ。


 違う違う。犬面の男性魔族だ。たぶん。


 けど妙だ。顔は犬なのに蝙蝠みたいな羽が生えてる。


 それが私の代わりにルクス君の隣を陣取っている。



「何故あなたは魔術を使えるのですか?」


 使ってる自覚は無いんだよなぁ。



「ま、魔力を封じる装置? に、には弱点があるんだよ」


 いかん。落ち着け。動揺がバレる。声を震わすな。



「……驚きました。まさか人間にあれを知る者がいるとは」


 装置で間違いないらしい。結界の類って可能性もあったけど。


 見つけて破壊すればお姉ちゃんたちの助けになる筈だ。ルクス君たちも自力で脱出出来るかも。


 けど先ずはこの状況を切り抜けないと。



「是非聞かせて頂きたい」


 ルクス君に鋭い爪を突き立てる犬面魔族。



「逃げろ! 構わずに!!」


「黙りなさい」


「ぐっ!!」


「ルクス君!!」


 ルクス君の脇腹に爪が食い込んでいく。



「ふむ。我慢強いですね。もっと悲鳴を上げなさい。彼女の口を軽くするのです」


「~~~~~~~!!!」


「やめろぉ~~~~!!!!」


『ナズナ!? 無茶なのだわ!!』


 思わず犬面魔族に向かって突っ込んでいた。



「うわっ!? 放せ~~!!!」


 犬面魔族に頭を掴まれてぶら下げられてしまった。



「痛みも感じていないようですね。どころか髪にすら触れられぬとは。これは興味深い」


「ナズナを放せ!!」


「あなたは少し黙っていなさい」


「ぐぁぁぁぁあああ!!」


「ルクス君!!」


 腹を抉られたルクス君は痛み故か意識を失ってしまった。



「これで静かになりました」


 ポトリと肉片を落とす犬面魔族。


 血……たくさん出てる……。


 血……肉……血……。


 ルクス……君……。




----------------------




「あなたはいつまで保ちますか?」


「……」


「おや? 気を失ってしまったのですか? 見たところ戦闘は素人のご様子。血を見るのにも慣れていないようですね」


「……」


「何故あなたのような者が勇者パーティーと共に? 理解できません」


「……」


「嘆かわしい。戦場をなんと心得るのか。女子供だからと否定するつもりはありませんが、非戦闘員を連れ歩くのは違うでしょう」


「……」


「それともまさか、肉壁にでもするつもりだったのでしょうか。確かにこの頑丈さならば役立つかもしれませんが……」


「……」


「勇者がその程度の者であるなら、ゼルガディア様のお相手が務まらぬのも道理というものでしょう」


「……」


「……おや? あなた目覚めているのですか?」


「……」


「……っ!?」


 犬面魔族は慌ててナズナを手放した。


 その判断は一瞬遅かった。



「なっ!? 腕が!! 私の腕がぁ!!!」


 肘から先が消滅したように消え去った。鋭利な刃物で切られたようにすっぱりと。


 しかし不思議なことに、残ったその腕からは血の一滴たりとも落ちてこない。何かに覆われて……否。何かに塞がれているようだ。


 その何かが彼の腕を瞬時に切り落としたのだろう。


 まるでプレス機のように。


 だから切られた先の腕が見当たらないのだ。


 それは一瞬にして塵となってしまった。


 その事実に彼はまだ気付いていない。



 彼がその場から腕を引くと、ようやく傷口から血液が溢れ出してきた。



「ぐわぁぁぁあ!!!!」


 彼の脳はようやく痛みを認識した。


 その怯みが命取りだった。


 彼は逃げるべきだった。


 何もかもが遅すぎた。



 悲鳴はいつの間にか止んでいた。


 彼の姿ごと消え去っていた。


 気付いたのは二人だけだった。

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