02-08.あからさまな罠
「よくぞいらしてくださいました! 勇者様!!」
領主様は両手を上げて歓迎してくれた。
何やら困りごとがあるらしい。ルクス君を褒め称えてもてなすのもそこそこに、早速相談事を口にした。
「落とされた? 北の砦が?」
「はい。大至急向かって頂きたいのです」
思っていた以上にヤバい案件だった。
……え? マジ? 本当に?
だってこの都市の人々は平和そのものだったよ?
どう考えてもすぐ近くまで魔族の大群が迫っている空気感なんかじゃなかった。
『きな臭いのだわ』
だよね。いくらなんでも無理があるよね。
「にわかには信じ難いのですが」
ルクス君も同じことを考えたようだ。
「ご存知ありませんかな? 魔族共は川越えをせぬのです」
川越え?
「北の砦とこの領都の間には、大河が横たわっておりましてなぁ。奴らに砦を落とされることは歴史上幾度もありましたが、奴らが川を越えて攻め込んできたことは皆無でして」
だとしても……。
「今まで無いからと言って、今回も無いとは限りません」
「重々承知しております」
「備えは済んでいるのですか?」
「はい。もちろんです。それよりも勇者様。どうかお願いします。我らをお救いください」
……いくらなんでも、あからさますぎない?
既に軍隊が派遣されているなら、そうとわかる空気に切り替わっている筈だ。けど町の人たちに気付く様子もない。
『この領主はきっと偽物なのだわ。勇者だけを誘い出そうとしているのだわ』
普通ならそう考えるよね。だからこそ、こんなあからさまな罠を仕掛けてくるとは考えづらいよね。
「わかりました。すぐに出立します」
「感謝致します!! 勇者様!!」
ルクス君はそれ以上追求することなく、一旦その場を後にした。
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「アルバ姉」
「奴は人間さ。洗脳の類も無いだろうね」
魔族が化けているわけじゃないんだね。そして操られているわけでもないと。
だとしたら裏切った? 領主が勇者を売ろうとしている?
「アルバ姉はここに残って。ナズナも一緒だ。僕とブルーノだけで行ってくるよ」
「代わりに同行しよう。その方が怪しまれまい」
騎士様!? まさかの協力姿勢!?
「助かるよ。アルバ姉が抜けたら怪しまれてしまうかもしれないからね」
勇者パーティーは三人だって知れ渡っているんだね。
「騎士様」
「……必ず戻る」
「うん♪ 待ってるね♪」
やった! デレた! 騎士様デレた!! ひゃっふー!
『ふふふ♪ 燥ぎすぎなのだわ♪』
これが燥がずに居られるかってんでい♪
祭りじゃ祭りじゃ~! どんどんぱふぱふ~!!
「……放すぞ」
「……うるうる」
あかん。引き止めちゃダメだってわかってるのに。
「ナズナ♪ お姉ちゃんが手を繋いでやるさね♪」
「うん! ありがとう! お姉ちゃん!」
ガシッ!
両手に華だぜ!
「……やっぱり残っているかい?」
「さっさと済ませるぞ」
騎士様は私の手を優しく解いて歩き出した。
「いってらっもが!?」
お姉ちゃんに口を塞がれてしまった。流石に騒ぎすぎた。空気読めてなかったよね。ごめんなさい。
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「お姉ちゃん? どこ行くの?」
「ちょっとね~♪」
ルクス君たちと別れた後、お姉ちゃんは私の手を引いて裏路地へと入っていった。
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「おうおう♪ 姉ちゃんたち♪ どえらいべっぴんさんじゃぁねえか♪」
「ぎゃっはっはっは♪ 危ねえぜ♪ こんなとこ入ってきちゃぁ♪」
「仲良くお手々繋いでピクニックかい♪ 精が出るねぇ♪」
出たな! チンピラトリオ! 初出演です!
「ちょうどいい♪ あんたらに聞きたい事があるのさね♪」
「「「ほ~♪」」」
逃げて逃げて! うちのお姉ちゃんチョー強いんだから!
「ぎゃふん」「げふん」「ごばぁっ!!」
大丈夫!? 最後の人だけめっちゃ吹っ飛んでたよ!?
「あ~……ちとやりすぎちまったかねぇ~」
お姉ちゃんのやりすぎはシャレにならないよぉ!?
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「「あ、姐さん……なんでもお話いたしやす……」」
話が早い!!




