02-07.不安な幸福
「着いた~~~~~~!!!」
来たぜ! 大都会!!
ここまで苦労したぜ! 何故だか魔物たちがひっきりなしに襲いかかってくるんだもん! 勇者様って大変だね!
「決して離れるな」
「騎士様♪ 手繋いでてくれるの!?」
「ちがっ!」
騎士様が私の前に伸ばしてきた手を握りしめる。
「しっかり捕まえててね♪ ここで暴れちゃったら大変でしょ♪」
「……くっ」
「にゃっはっは♪ 先を越されちゃったねぇ♪」
「痛っ!? 痛っ! 痛いよ! アルバ姉!」
お姉ちゃんから肘打ち連打を喰らって抗議するルクス君。
「ありがとね~」
「うむ♪」
早速お困りのおばあさまを助けるブルーノさん。
賑やかなパーティーだ♪
私たちは、最初に領主の館へと向かった。
「本当に私たちまで付いて行くの? どっかで待ってるよ」
「いいや。君たちも来ておくれ。どうか僕の側を離れずに」
おおっと。
「あらま」
「うむ」
「……なにさ」
ふふふのふ♪
騎士様と♪ ルクス君♪ 迷っちゃうねぇ♪
『モテる美少女は辛いのだわ♪』
むっはっはっはっは♪
……はぁ。
『元気がないのだわ! ナズナらしくないのだわ!』
だってさ~。
『めげるのが早すぎるのだわ!』
けどさ~。
間違いないよね。
暴走してる時の私こそが「トリスティア」なんだよね。きっとさ。
話しかけてみても全然応えてくれないけどさ。
『心配要らないのだわ! トリスティアもナズナが大好きなのだわ!』
……まあね。私がピンチになると代わりに出てきて戦ってくれるくらいだし。
今もこうして、私の全身を覆って守ってくれているわけだしさ。
けど目的がハッキリしないんだよね。何か嫌な予感でもするのかな。勇者様御一行に混ざっていれば、今まで以上の脅威が迫ってくるかもって思うのもわかるんだけどさ。
だからガッチガチに固めて守ってしまおうって考えもわからないわけじゃない。幸い生理現象に影響が出ない程度にしてくれてもいるし。お風呂に入るまでもなく身体は清潔に保たれているし。色々と気を遣ってくれているのはわかってる。
けどさ。だからこそさ。そこまで意識がハッキリしてるなら、トリスティアにも幸せになってほしいじゃんさ。私だけがトリスティアに守られながら良い想いをするだなんてさ。やっぱり楽しめないよね。心の底からはさ。
『わたくしが話してみるのだわ!』
それは是非ともお願いしたいところだね。そもそも私がピンチにならないと出てきてくれない問題はあるけれど。
勇者一行と共に居る限り、その機会は訪れないのかもしれない。トリスティアはこのまま出てこないつもりなのかもしれない。
……もしかしたら、このまま力を使い切って消えてしまうつもりなのかも。
以前より更に防御力を上げているってことは、それだけ力の消費も大きい筈だ。私に仲間が出来たらか、自分の役目は終わったと緩やかな自死を目指している最中なのかも。そんな妄想じみた不安まで湧いてくる。
私は彼らと共に居るべきではないのかもしれない。
『そんなことはないのだわ! トリスティアも絶対喜んでいるのだわ!』
けどさ。トリスティアが消えた私に何の価値があるの?
魔力も持たず、戦いの心得もない。魔王討伐の旅路に付いて行ける筈がないじゃんか。
トリスティアは私にとっての生命線だ。無くてはならない存在だ。だからさ。お願いだよ。無茶をしているならやめてよね。私にはあなたが必要なんだから。
自分を邪魔者だなんて思わないでよ。
生きていちゃいけない存在だなんて思わないでよ。
私が話を聞くからさ。いつでもいいから出てきておくれ。
私たちは味方だから。私とティアは追い出したりなんてしないから。だからお願いだ。トリスティア。
『……』
ティアからもなんとか言ってあげて。
『……逆効果なのだわ』
なんでさ。
『わたくしは嫌われているのだわ』
初耳だ。どうして?
『知らないのだわ。あの子からは敵視されているのだわ』
何か気に触るようなことでも言ったんじゃない?
『かもしれないのだわ』
大丈夫だよ、トリスティア。ティアも良い子だから。ただちょっと欲望に忠実なだけだから。ちゃんと私のことも大切にしてくれているよ。許してあげてね。トリスティア。




