初めまして、異世界 78
(と、とりあえず落ち着いてっ!サイラスさんにもこっちで決めた自分の名前を呼んで貰おう。その為にも自己紹介を…あ、キラやハクロウにも新しい名前になったよーって言わなきゃ!)
森の中を移動中に思い付いたこの世界での名前は、単純に地球の時の名前をもじって考え付いたようなものなのだ。
我ながら思考が単純過ぎる…とは思ったものの生まれてから貰った自分の名前はそうそう人生で早くに変化もしないし、今まで呼ばれてきた地球での生活でだいぶ自分自身に馴染んでしまっている事もあり、突飛な名前を付けても後々自分が納得しないような気がして結果、無難な方向性となってしまったのは認めざるを得ない事実だと自覚してしまった。
(まぁ、でも私が納得していれば何の問題もないのだし。自分の性格は自分自身がわかっているのだからゴテゴテに飾り付けたものや変化に富んだ名前じゃ、自分のものって認識しない事は目に見えてるもんね。やっぱり平凡で普通な人間にはそれ相応の名前が合うってことだよ!)
うんうんと深く頷きながら特異な才能や稀有な存在でもあればすごくお似合いの名前だと誇れるものになったのだろうが…と思いはしたものの、残念なことに私の中身はこんな感じの人間でしかないのだ。お洒落に捻った名前を付けたところで名前負けすることがオチとして見える未来しか想像ができない、と正確に悟ってしまい早々に冒険することを諦めてしまった。
ここはおとなしく謙虚平凡な凡人生活を歩む為にも質実剛健でしっかりと地に足が着いた名前でいかなければ──と思い立った時に、自身の名前の呼び方でもう一つ違う呼び方があったのよと母親に教えてもらった時のことを思い出した事がキッカケで、今回の命名が決定打となった事は想像に難くなかった。
(本当のほんとーにっ!ふとした会話の欠片だったのだけど何かしっくりきたって言うか…。お母さんが話してくれた事が意味を持ってたのかもしれないけど、もう一つ名前を持つならそれだなって思ったんだよね。それにプラスして名字も一字入れたいなって思って。…ほんと自分でも思うけど、単純だなぁ)
けれど困ったことに単純な自分も嫌いではないのだと思えるあたり自己肯定感はバッチりだと堂々と胸を張れたので、これもひいては家族の愛情の賜物だと内心にししと笑いが漏れてしまったのだが…そんなことよりも、今は先に皆へと名前をお披露目することが優先的行為だと我に返り少々自分の世界に浸ってしまった事を謝りながら、この世界での自分を紹介するために改めて初めましての言葉を口にするのだった。
「──たいへんおそくとなりましたが、サイラスさんにはあぶないところをたすけていただき、また、こうしていまもめんどうをみてもらえてたいへんかんしゃしています。なのるのがおくれましたが、わたしのなまえは『ニイナ』といいます!あらためてサイラスさん、それからキラとハクロウも、これからながくよろしくねっ!!」
「ああ、こちらこそ末永くよろしく頼む。名前を教えてくれてありがとう…ニイナ」
「ニイナご主人!ずっと一緒にいようねっ!!」
「ニイナご主人俺も俺もっ!!!」
嬉し恥ずかし名前の初披露にあたり三者三様の心地好い返事が嬉しくて、また、当たり前のようにずっとこの星で傍に居てくれると返してくれた皆の言葉に嬉しさで胸が震えて、私は自身の声を詰まらせないように二匹の名前なのかご主人なのかよく分からない言い方に笑いで涙を滲ませながら、殊更元気よくよろしくを返すのだった。
「うん!みんな、よろしくね!!」




