初めまして、異世界 77
「…さて、食事が終わってくつろいでいるところに悪いが改めて、君の詳しい話しをこれから聞かせて貰えるだろうか?まず手始めに…そうだな、性急過ぎるのも整理がつかないだろう。始めにずっと気にかかっていた君の名前を聞いても平気だろうか?」
「なまえ……………あっ!そういえばわたし、あったときになのっていなかった……?ぁあっ!!おそくなってごめんなさいっサイラスさん!!!わたしっ、いままできづいてませんでした…!!」
「いや、あの時はまだ君と俺は知り合いでも何でもない警戒に値する他人同士だったわけだから、名乗らないのは正しい対処法だった。ましてや初対面で片方は大人で、片方はこんなに小さな子どもだったんだ。君ぐらいの年齢の子が不用意に自身の事を漏らさなかったのは、褒めこそすれ責められた事では無いだろう。…まぁ、その後は一気に警戒心が無さ過ぎて逆に心配になったのだが…。それ以降も聞こうと思えば機会があったとは言え、出会ってばかりで尋ねるのも気が引けてだな。まずは、俺個人に慣れて貰ってから名前を徐々に呼べれば良いと思っていたんだ。だから、気にしないで欲しい」
「サイラスさん…、ありがとうございます!!そうやってこどものわたしにもいちにんまえにきづかってくれるから、わたしもサイラスさんにたいしてみがまえなくなったんだよっ!サイラスさんがすごくやさしくてきくばりやさんだからだよねっ!!」
「ぐぅっ……!!!!!っな、なんだこのかわいらしい存在は…!!いかん、今度は胸奥が急な衝撃で息苦しくなってきた!!……っ最初の時にも思っていたのだが………君は本当に無垢過ぎて危なっかしいのに、意外にも重い一撃をもたらすから意外と気が抜けないと実感してしまうな。…初めて見た時、ただでさえその可愛らしい容姿と息を呑む瞳に一時も目が離せないと思ってしまったが、人となりを知ってしまった今は常に誰かしらに連れ去られてしまわないかと本気で心配が勝ってしまっている。これから人族の土地に向かおうと思っているのに、君の瞳が翳るのを見るのは嫌だと自覚してしまっている自分がいるのにも驚きだ。だからこそせめて、と思うのだろう。君の名を知り特別な間柄だと周りに周知させておき、不埒な輩が安易に君へと手を伸ばせない環境を作りたいと思っている。…こういった理由で名を聞かれるのは嫌だろうか?」
「う、ううん!イヤじゃないよっ!!」
「…そうか、良かった」
サイラスさんが本当に心からの安堵した様子で微笑みながらこちらを見てくるので、私は名前一つでこんなにも大袈裟なと思うのと同時に知りたい理由すら隠さず真摯に説明してくれる事へ、不覚にも動揺なのか動悸なのかわからないドキドキした気持ちの中で頬に熱が集中してくる感覚を自覚してしまっていた。
(と、特別って、要は身内ですよーって事をアピールする為に知りたいってことだよねっ!?真面目なサイラスさんの事だから名前を聞くにも許可をって思って説明をしてくれた訳だよね!?けっして他意があるわけじゃないものだよね!!?いくらプレイボーイだからって幼女に真剣な顔とあの内容をまっすぐにぶつけるのは良くないと思うよ!!!中身は転生したてで大人の意識の方が強いもんだから勘違いしちゃうし顔が反応しちゃうんだよぉおおおおお!!んもう、サイラスさんのバカバカ!天然たらしの初恋泥棒人間さんめー!!!)
胸中でばかすか好き放題にサイラスさんへと文句を叫んでいた私だったのだが、現実の自分は赤面が止まらず恥ずかしさゆえに当の発言の主へと目も合わせられない状況でひたすらに視線をあちこちへと泳がせていたのだが、そんなこちら側の心情など露知らずサイラスさんは突如挙動不審となった私の一挙手一投足がツボにハマったらしく、後々に「とても言葉では表現できない胸の苦しさを溢れんばかりに覚えて、衝動で大陸中を駆け抜けたい気持ちを必死に抑えないといけなかった為危うかった」と真剣な表情で、かつ、真面目に伝えてくるのでどういう反応をすればいいのか大変困ってしまった。




