76.尋問
咄嗟に「あなたにお願いがあるんです。」と申し出たのは、私個人がセージにお願いがあると下手に出ているというアピールの他に、あなたの能力を知っていますよというメッセージでもあった。
「何で知っている?」とは口には出さなかったが、おそらくそう思っているだろう。その上で私が周りにその能力を漏らすと思われでもしたら命が危ない。だから最初にばらすのだ。
「と、言うか。知っているのは私だけはないですよ、たぶん。それらしきこと聞かれましたもん。もちろん適当に流しましたけど。」
わざと口調を崩し、わざと本来の性格は別にあるのだと見せかけた。
そうすれば多少なりとも秘密の共有になる。
相手の秘密を知っていればそれは保険になる。ひいては私への警戒度が多少軽減されるかもしれない。
「知っているのは誰や?で、あんたは何て答えた?」
睨むというよりはきつい目つきで尋問をしているつもりなんだろうか?セージはいつも装っている敬語をとり強い言葉で聞いてくる。
「先生たちからセージ君の異能を知っているかと聞かれました。だからレオ君たちはあなたを探っているのだと思います。残念ながら私には魔法のたぐいは聞かないのであなたが彼らにどんな暗示をかけていたのかは分かりませんが、それを聞かれひどく驚いたような表情をしていましたよ。」
「いつもの勉強会で聞かれたため私も彼らと同じように驚いたふりをしましたが、あの時は何を驚いているのか分からなくて。この分だと他の面々にも先生たちは同じ質問をしているかもしれませんね。」
全くのでたらめだ。
セージの異能で知っていることを全部話せと誰かに聞けばすぐに嘘だと分かるものの、あらかじめ事の詳細を細かく話せばわざわざ確認し直す手間はしない、と言いなという希望的観測を含めた賭けだった。
神経質な性格なのは何となくわかっていたが、爪同士でがりがりいじっているのは見ていて痛いからいただけない。
「で、あんたは何で知ってるん?いつから?ってゆーか、何で魔法が効かない?」
先生とクラスメイト、多くの人がセージの異能について不信感を持っていることが予想外だったのか、先ほどまでの苛立ちを少しばかり抑え諦めなのか、それとも思考を切り替えたのか疲れたように今度はゆっくりとした口調で聞いてくる。
「(まぁ、先生方とレオ君たちが知っていることは事実だけど…)何でって、夏休みあれだけ派手にやっていれば学園内に残っていた側としては噂になっていましたよ。誰かが魔法を違法に使っているって。」
これは彼が幼馴染にかけた記憶操作をさしている。
もちろんこのこともまだ私以外誰も知らない。
もしかすると先生たちがセージの異能を知り、独自に調査している可能性はあるが。
「で、あんたが魔法の影響を受けない理由は?」
さて、今度はどう答えるか?神様は嘘をつくことは気にしないらしい。
確かに嘘をつかない人間なんていないと思うけれど、人に悪意だ何だと天界の基準はどうなっているのか今度確かめたいと思う。
「私のこれはよくわからないんですよね。生まれつき?先生たちも色々調べてくれてはいるみたいですけど。なんせ生まれもよくわかっていないですからね、私。」
とりあえずは可もなく不可もない、調べようもない回答を選んだ。




