75.すでに知られていたこと
「あの二人はあなたからの差し金、と言うことでいいでしょうか?」
そうセージ聞かれ頭の中が真っ白、なんてことにはならなかったがびっくりはした。
咄嗟のことで表情を繕うことができず、驚いたことを隠せはしなかったが今回のことはレオの提案だ。元をただせば私の行動から今回のことに行きついたのかもしれないけれど、差し金かと問われれば「違う。」とはっきり答えることができる。
だから
「違います。レオ君とキヨ君のことを言っているのでしたら、ですけど。」
と笑って答える。
なぜセージが私に行きついたのかは知らない。
勉強会メンバーに何かあると思い、その中から首謀者を見つけようとしているのかそれとも他に何か証拠があるのか、私は探る意味でもセージにたやすいと思われては困るのだ。
苦虫を噛み潰したような表情をしたセージを見て、決定的な証拠はないのだと悟った。
でもセージの中で私が何かを企んでいるというのは決定しているのか、今度はセージの方が取り繕うことなどせず分かりやすく不快感をあらわにした。
「(さて、私は何か疑われるようなことをしただろうか?)」
思い返してみてもセージとあいさつ程度の日常会話以外で接触を持ったことなど、以前倒れて保健室送りになった時、なぜか付き添いとしてセージがいたあの時の一度きりだ。
「(結局あの時は何でいたのか深くは考えていなかったけど、…そうか。)」
あの時はセージ個人よりもこの世界でどう生きるかに模索していた。
だからこんなにも簡単なことを見落としていたのだ。
「ご自身の魔法が効かないだけで何でもかんでも疑うのはよくないですよ。」
あの時セージは私に何らかの魔法を使ったのだろう。
もしかしたら異能の練習として記憶の操作をしたのかもしれないし、すでにつけていたピアスの性能を見るために魔力を奪おうとしたのかもしれない。
どちらも私には無意味なのだ。
再び顔をしかめるセージにこの予想が当たったのだと分かった。
形勢が逆転したことでいくらか心に余裕ができた私は、どうにかしてセージに敵対心はないのだとアピールしないといけないことに気づいた。
セージの人格を正確に把握できたわけではない。
それでも私が想像していたよりもずいぶんと年相応だと言うことはここ最近嫌というほど分かった。
元から計画的というよりも感覚で生きているのではないかと言われていたセージ。
自分の計画の前に邪魔になる存在がいることで私は自分に攻撃が向かってくることを是が非でも回避したい。
「何か誤解があるように見えますが、私はあなたにお願いがあるんです。」
出来るだけ平静を装い、私は協力関係を望んでいるかのように振舞った。
今だ警戒心が説かれることもなく、教室では見せることのない険しい表情のままのセージは分かりやすく眉をしかめ睨む、というよりは品定めでもしているかのような視線を私に寄こした。
「セージ君の異能で今度のクラス分けの試験、私の異能を召喚、ただし一匹だけの制約が付いていると先生たちに上書きしてほしいんです。」
お願いできますか?とこちらが下手に出ているように分かりやすくアピールした。




