68.素直な選択
モモは昨夜に見たという予知夢を勉強会のメンバーに話した。
話したうえでどうしたらいいのかと聞いてきたのだ。
素直な選択と言えばいいのだろうか?
アカヤに相談しなかったことは少し意外だったが、先生たちに相談するにしても迷いがあったのだろう。
「…もし、予知夢じゃなかったら、でも予知夢だったら、あれは本当にセージがやったことなのかもわからないし、私どうしたらいいかわからなくて。」
今にも泣き出しそうなモモの言葉に少しばかり罪悪感で胸が痛くなった。
彼女は今日一日、その夢をどうするべきか悩んでいたのだろう。
「…皆が騒ぐ中、一人落ち着いて、笑っていたんだな?」
レオは確認するようにゆっくりとモモに聞いた。
モモは言葉にすることなく頷いてそれを肯定する。
「なら、彼一人、かは分からないけれど、何かしら関与していると思っていいと私は思う。」
モモとレオにならい、私も言葉を切るようにして発現する。
あくまで私個人の意見で、これが正解ではないと念を押し私は考えるように再び黙った。
「一度整理してみよう。それからこれからどうするか考えよう。まず時期はいつなのか。それによって僕らの行動も急がなくてはいけなくなる。」
レオの言葉でモモはようやくほっとしたように表情を崩してから強く頷いた。
*
モモに見せた映像は私が物語を読んで想像した情景だ。
それに少しばかり分かりやすくセージを印象付けたもの。
校庭、運動着ではない、半袖、他の学年がいない。
それらの情報からレオは今月末に行われるクラス分けの儀であると導き出した。
「(まぁ、ちょっと簡単だったかもしれないけど。)」
九月の末日に行われるクラス分け、いわゆるレベル分けの儀式。
その日に空間がわれ、先の見えないその場所へ多くの生徒が飲み込まれていった。
そこまでまとめられ、キヨが申し訳なさそうにモモに聞く。
「辛いかもしれないけど。誰が被害にあったか分かる?」
あの場面で血が流れるよう大けがをしたのは片足を失ったアオイ君だけ。
異界に飲み込まれていった描写は痛々しいというよりもただ吸い込まれたと言った感じで、残された面々は多かれ少なかれ切り傷や打撲を負っていたもののさほどグロテスクでもない。
実際にケットシーが作った映像を見て私はそう思っていた。
だから真っ青になるモモを前に私はぼんやりと彼女と自分の何が違うのだろうかと疑問に思っていた。
「大けがをしたのはアオイで、それから_____」
モモは飲み込まれていった人と門から出てきた数体の異界の住人と戦い怪我を負った人物の名前を上げた。
異界に飲み込まれていったのはクラスメイト数名と校舎から助けにやって来た先輩たち。
モモは自分と同じ水属性以外の先輩の名前をあまり知らなかったから正確な情報ではなかった。
それでも被害の大きさは聞いていて分かっただろう。
「でもその空間にできた謎の穴…それってどこに繋がっているの?出てきた生物?それは一体何?…見たことのない大型の生物、誰かの使い魔ってことはあるの?」
モモに問いかけるというよりも頭の中に浮かんだ言葉をそのまま口に出しているようなスミレちゃんは床を見ていた。
「私がまだ使いこなせてないっていうのもありますけど、正直人間よりもはるかに大きいという使い魔は私には呼び出せる気がしません。サイズ=魔力量ではないですけど。」
使い魔の召喚が異能である私は言った。
「食器棚ぐらいって言うと、高さだけでも2m前後ぐらいか?…横幅は…」
レオのつぶやきにモモは手を大きく広げ「これぐらい!」と約150㎝位を表していた。
「こわっ!」
想像したスミレちゃんは身震いしながら声を上げる。
文章から読み取り私の想像で出来た異界の住人は特撮の敵キャラクターのような感じで、私は可愛らしいと思ったがどうやらそうではないようだった。
モモもスミレちゃんの叫びに同意し「怪獣?化け物?なんかそんな感じ。」と言った。
「地獄とか、異世界なのかな?そういう生物がいるってことは。」
キヨの言葉にレオは苦虫を噛み潰したような表情で一度口を開いてから閉じ、再び開いた。
「…それは異界の亀裂だ。」
レオははっきりとそう言い切った。




