67.夢訪問
モモが通常時の夢と予知夢をどう見分けているか分からない。
何となく分かる、そんな曖昧な表現が物語ではされていた気がする。
だからこの作戦も上手くいかない可能性は大いにあった。
それでも出来ることはやっておくべきだ。
「(そう思っていたけれど、実行するのはケットシー。)」
自分が動くわけではないため、どうにも実感がわかなかった。
「(他人の夢を操るってどういう感覚なのかしら?)」
これを実行するのが私でなくケットシーであったことは僥倖だったかもしれない。
モモを始めとする何人かの人物は私にとって物語の中の住人だった人たちだ。
それが今、同じ教室で机を並べ共に勉学に励んでいる。
彼女たちが同じ世界を生きている人間であるとようやく実感がわいてきたのだ。
そんな時に相手の夢の中をいじるという行為をすることは、再び彼女たちを現実世界で生きている友だと認識できなくなる恐れがあった。
その認識が間違っている、セージの一件で深く反省している。
「(私の知っている情報だけで彼らは生きているわけではない。)」
きちんとそう認識しないと見落とすものも多くなるだろう。
そこまで分かっていながらケットシーにモモの夢を上書きさせに放った。
この時点でまだ私はモモをこの世界の住人、自分は読者という気持が抜けきれてないのかもしれない。
そうでなければ、神様の言うように私は友達の心うちを勝手に書き換える悪人だと言うことだろう。
*
物語は漫画やアニメのように映像はない。
対して夢は映像だ。
だからこそ、文章からは知るはずのない一回目の異界開門の映像をモモに見てもらう際、私は怪しく笑うセージを何度もちりばめた。
彼がやったとは明確な証拠は写さない。それは私がその時のことを知らないからだ。
夢を見たモモと彼女に相談された人物にそれを探ってもらう。
それが今回の目的だ。
「(でもそんなに上手くいくものかしら…)」
ケットシーを疑っていたわけではないが、夢とは曖昧な現象だ。
上手く操作できたとしてモモがそれを覚えているか、何て不安定な要素もあったがそれは杞憂に終わる。
「あの、ね。夢の話、してもいい?」
いつものようにはっきりとしたものいいとは真逆。
言葉を選ぶような話し方と、どこか緊張している様子のモモに私は魔法が成功したのだと悟った。
「たぶん、予知夢。はっきりと映像化されたからそうだと思うんだけど、ね。」
今ここにいるのは私とキヨ、スミレちゃんとレオだ。アカヤはいない。
この中に見せた映像の中にある被害者はいない。
それでも言いづらいのだろう。
クラスメイトが多くの人の命を危険にさらす行為をこれからする、なんてこともしただの夢だったら、いやただの夢じゃなく本当に予知夢だったらどうすればいいのか、モモも誰に話していいのか分からなかったのだろう。
「(それが私たちというのは少しだけ予想外だったけど。)」
一番はアカヤ、次点で先生の誰かだと私は予想していた。
モモのこの判断が私たちの運命をかけた。
それだけは事実だ。




