65.開門防止案
主人公三人組とレオとスミレちゃん。メインキャラクター7人のうち5人がそれぞれ決まった相手と行動を共にしていたから、残りのアオイ君とセージも必然とコンビのように読者は考えていた。
でもそれはあくまでクラス内だけの関係で必要があれば組むことはあれど、それ以外の付き合いはまるでなくひどくドライな関係だったのかもしれないと現状を見て思った。
それこそセージに仲良し幼馴染グループがいたように、アオイ君だって学園外に友人がいるだろう。何も彼らの世界はここだけで完結していない。
それを読者だったころは考えていなかった。
「一番はストレスを昇華して異界の門を開けたい、異界に行きたいって感情をなくしてもらうのが平和的だけど。」
新学期は始まったが、いまだ防音防魔のシールドについて誰からも指摘がなかったため、私は今日もケットシーたちと作成会議をしている。
元々、私の虚弱体質(仮)対策としての防犯ブザーの音を寮内に通すため私の部屋だけそれらの機能を排除していたが、新学期に入ってからは倒れることもなかったし、そもそも夏休み中に私がかけたものに周りは気づいていないのかもしれない。
「(声に出して誰かと話し合わないと結構見落としていることが多いのよね。)」
ケットシーたちが来るまでは様々な危険性を考慮し、すべて私一人の脳内会議で完結させていた。
だからこの状況はありがたかった。
「しかし、しかし、ストレスの昇華とはいったいどうすればよいのでしょう?すでにご友人たちからの記憶は抜き取ってしまわれていますし、元の状況には戻らないかと。」
ケットシーの言葉にうなずく。
仮に幼馴染グループ内のカップルが破局したとして、元の状況に戻れるかと言えばそうではないだろうし、セージ自身の記憶を抜き取ってしまった今、彼がそのグループに戻れるとはとても思えない。
「初めからやり直したとしても、それは彼にとって変わらないものではないだろうしね。」
セージを子供だと言ったものの、彼が何を考えているのか分からないのは今も同じ。
持て余した感情と勢いで、すべてどうにでもなってしまえ、そう思っていたとして、どうすればその思考を止められるのか私には全く分からなかった。
「私が彼の異能を知っているとほのめかして興味をこっちに向けるとか?」
自暴自棄に見える彼にとって自身の能力が周りにばれることはどれほど価値があるのか正直分からない。
「いけません、いけません。それは危険すぎます!」
ケットシーとクー・シーは慌てて立ち上がった。
確かに今のセージなら人一人ぐらい処分しちゃおう、みたいな危うさを秘めいている。
どのみち異界を開けば多くの犠牲者が出ることぐらい彼も分かっているだろう。
だったら遅かれ早かれ彼は人を殺める気だと考えられなくもない。
魔法ならば私には効かないものの、物理攻撃はしっかりと聞くため後ろからぶすりと刺さればその時点で終わりだろう。
「だよね。うん。なしなし。」
自分で提案しておきながらすぐさま棄却する。
「あとは先生に告げ口するか、アカヤをけしかけるか。」
口にしたもののあまり現実的ではない。
先生にセージの能力を告げ、彼が帰省中に起こした事件を密告してもいいがどうやって知ったと聞かれるだろうし、アカヤに最近セージの様子がおかしいと話て直撃してもらったとしてもそこから進展はないだろう。
「然り然り。アカヤ様は自身の気になることに関しましてはとても積極的ですが、面倒なことはお嫌いな様子。また世良様もあまりアカヤ様を好んでいるようには見られませんので、ご友人たちの代わりにはとてもなれないかと。」
私はアカヤをつついて、セージに何らかのアクションを起こさせ彼のやろうとしていることが少しでも明るみに出ればいいな、あわよくば異界開門の準備前に爆発してくれれば事件自体起こらないのではないかと思っていたが、どうやらケットシーは幼馴染グループの代わりにセージの友達にアカヤがなってくれないかと思っていたようだ。
「(神様の話では召喚とはあくまで名義上で、彼らは私の想像上から生み出されていると言ってけど、思考まで私にトレースするわけではないのか?)」
そんな疑問を感じながらも「そうね。」と同意した。
「あとは私がセージの魔力を取ってしまうとか?」
これはあくまで最終手段だ。
それが分かっているのか二人も渋々という感じの浅い頷きを返してきた。
開門されていなければ混乱もない。セージの魔力はどこにいったのかと騒ぎになるだろう。
「(でも防げるなら防いだ方がいいし。)」
ピアスにしろセージ個人の魔力にしろ、どうやってばれないように奪うかが当面の課題になる。
「もっと確実で被害が小さい方法があればいいのだけれど。」
考える時間は一か月以上あった。
セージのまさかの行動理由に呆気にとられたものの、考えていなかったわけではない。
「(でも結局決定打はなかったわけで‥‥)」
大きくため息をついて、誰か代わりに解決してくれないかしらと現実逃避した。




