64.新学期
13歳は大人ではない。子供だ。
例外はなく、セージもただの子供なのだ。
そう自分に言い聞かせれば、心はいくらか穏やかになれた。
物語には書かれていなかったセージ暴走の原因。
それが子供じみた現状への執着だったことには驚いたが、思春期における思考としてはありえなくはない。
「(ただ自暴自棄になっているセージをどう止めるかが問題だ。)」
今更、セージの身に起きたことをなかったことにはできなし、彼のように記憶をいじるようなこともできない。
だったらどうするか。
新学期になりセージの顔を久しぶりに見て私は考えた。
「(分かりやすく影を背負っている。)」
この時点でセージについて語られる描写はなかったはずだ。
だからこそ、10巻で再び異界の門が開かれたとき初めて本性を現したセージのサイコパスっぷりが強く印象に残っている。
短気なのはところどころ見られたものの、あくまでアカヤに対してだけだったため相性が悪かったのだというのが読者の意見。
基本人当たりはよく、謎に包まれているもののそこまで悪人めいた雰囲気はどこにもなかったその人が一連の事件の犯人で多くの犠牲者を出したのだ。
「(これはアカヤたちが気付かなかったから描かれなかったのか、それとも何らかの誤差によりセージの感情がセーブできていないのか。)」
私というイレギュラーがいる。
そのためこれが原作本来での彼の行動なのかが分からない。
「(分からないがあんな表情の人間、すぐにでも何かしでかしそう。)」
数週間後に異界の門を開くわけだからしでかすにはしでかすが、それよりも早くセージが何かやらかさないか私は不安だった。
隈があるわけでも顔色が悪いわけでもない。
ただいつも通り気怠げではあるものの、それ以上に殺気がにじみ出ている。
よどんだ瞳がどこを見ているのか危うい雰囲気は私以外も気づきそうなものだったが、不思議と誰もセージのことは気にしていなかった。
「なんかセージ君、機嫌悪くありません?」
彼が席を立った後、私は隣の席のアオイ君に話しかけた。
「ええ、寄らば斬るといった感じがしますね。」
あっさりとそう告げた彼に私は戸惑う。
そして再び気づきたくなかった事実に直面する。
元からクラスメイトはセージに近づくことはあまりない。
セージの本質に気づいているのか、それとも本能的にか彼を避け二人組で何かしなくてはいけない時はアオイ君と組むことが多かった。
アオイ君のようにセージの今の状況にクラスメイトが気づいているか分からないが、元々避けている相手。その人の機嫌が悪かったとして誰がその人に近づいて行くか。
そしてアオイ君も機嫌が悪そうだから近づかないという選択を選んでいる。
物語の中ではあくまで主人公たちの目線で語られているため、狭い範囲しか見られないがアオイ君とクラスメイトたちはそれなりに会話をしている。
もしかしたらアオイ君にとってのセージという存在はさほど優先順位が高くないのかもしれないと気づいた。
自身のまいた種によるものだろうが、セージが幼馴染たちに執着する原因は彼のこのクラスの対人関係が物語るように他に友達がいないからではないか、そう思ったとき私は何とも言えない気持ちになった。




