*神様はいつもタイミングが悪い
「どうです?生活にはなれましたか?」
今が彼女にとってどういったタイミングだったかはもちろん分かっている。
でもこれはまだ物語の序章で、取るに足らない出来事とは言わないがこれから先、彼女を待ち受ける運命はもっと衝撃的になるものだと私は思っていたから別段気にしなかった。
「あら、神様久しぶりね。何の用?」
いつも以上に冷たい彼女に私はがっかりするけれど、彼女をこの世界に連れて来てから今日まで随分と成長が見られた。
物事を俯瞰的かつ合理的に判断する反面、やはり彼女は正しいのだ。
その証拠に自分が生き残るためとはいえ、彼女の選んだ未来は大勢の人間の命を救う結果となるだろう。
「最近はどうですか?」
こんなやり取りは彼女からすれば時間の無駄とするかもしれない。
さっさと要件を言えと心の中では思っている。
「楽しいですよ。」
先ほどまで苛立っていた人物からは思えない感想。
でも私には分かるのだ。これが本心であると。
彼女は不思議だ。
物事を悲観的、というよりも辛辣に見がちなのにもかかわらず、個人の感情にそれは影響しない。
正確に言うのならば感情に引きずられず、個々の対象それぞれに向けるテンションを切り替えられると言えばいいのだろうか?
この世界の世良錆二に怒り、失望したもののそれはそれとしてこの世界そのものは楽しいと判断している。
だから言葉に偽りがない。
「この世界は」
ふと彼女は言った。
「この世界は私のための物?違いますよね?私の選択で本来死ぬべきではない人が死ぬことについて神様はどう思われて?」
自身の使い魔やクラスメイトに充てる口調とは違ったそれ。
そして突き付けてきた言葉。
私は彼女に恨まれていると感じた。
「数ある可能性の一つ。すべては各々の意思です。」
私はそう答えたがこれから先、本来の世界よりもより多くの犠牲が出たとしたら私はこの世界の担当から何らかの批判を受けることになるだろう。
私のわがままに付き合ってくれたその人は私を許してくれないかもしれない。
彼女はこの世界の大きな事件をないものとしようとしている。
だからこそこの世界に来ることが許された。
他でもない私がこの世界の担当である友人に頼んだからだ。
でも彼女以外の人物に私は干渉することができない。
もし彼らが彼女と出会ったことで選ぶはずだった善の道を違えたら?
私はその可能性を知っていながら目をつぶった。
そして彼女はそれを知っているのだ。
だから今も彼女の私を見る目は蔑んだ色を浮かべている。




