60.奇妙な展開
一日の報告にやって来たクー・シーから話を聞いていたケットシーの表情が何とも微妙に歪んだ。
セージにクー・シーの存在が気づかれたのだろうか?私はそう心配したが違った。
「どうかしたの?」
クー・シーはとても大きくて緑色という点以外は本当に犬だ。
対してケットシーは二足歩行と人の言葉を操るせいか妙に人間臭いところがあった。
「いいえ、いいえ。監視に問題はありません。ただ…」
もったいぶっているというよりは、言葉を選んでいるようなケットシーに私は都築を促した。
「本日の世良様はこちらへの帰還のためいつものグループで送別会を行っていたようです。」
それはこの数日間の感じから簡単に想像ができた。
「それで?」そこで何かあったのだろうか?
「最初はいつもと変わらずおしゃべりをなさったり、テーブルゲームをしたり和やかでした。…ふと世良様が例のお二人を見て「変わるもんやなぁ。」と言ったのです。」
それは二人の関係か、それとも関係が近くなったことで互いの接し方が変わったのかは見ていない私は分からないし、見ていても以前のその二人を知らないのだから分かりようもなかった。
「その言葉に同席されたご友人方が「変わらないものなんてないやろ。」「今は時間があるから集まれるけど、そのうち難しくなるんだろうな。」「大人になったらそれぞれ大事なものもできるしね。」と答えたそうです。それを聞いた世良様が激情なさって。」
「ん?待って?どこに激情ポイントがあったの?」
セージの好きな子(仮)が別の人を好きになったという意味の変わった?
それともセージではないその相手が大事になった?
その友人二人がくっついたことなどとうに知っていたことだし、今になって一体何にセージは怒ったのか私は全く分からなかった。
その考えは間違っていないようでケットシーもクー・シーも頷いていた。
「ごめんね、話の腰をおって。激情して、それで?」
そう聞きかえせば信じられない言葉が返ってきたのだ。
「その場にいたご友人全員に記憶操作の魔法をお使いになられたそうです。」
「ご友人たちの記憶から世良様の記憶をすべて抜かれたそうです。」
私は意味が分からなかった。
「その付き合い始めた二人の関係の記憶を抜いたとかではなく?」
もし好きな人が仲間内のメンバーと付き合いだしたことに不満があり記憶操作するとしたら、その関係だけを抜き取るのが普通じゃないだろうか?
他人の記憶を勝手にいじること自体そもそもご法度ではあるが。
「自分のって、それって友人たちの中からセージの存在がなくなったってこと?」
約十人近くの記憶。
二人の関係性を抜き取るだけならこの数日間の記憶をいじるだけで済むが、幼馴染全員の記憶からまるっとセージの記憶を抜くとなるとかなりの魔力が必要になるだろう。
「いや、何で?」
思わず目の前の二人に聞いてみればケットシーは「分かりかねます。」と答え、クー・シーは首をブンブンと横に振った。




