59.夏休みの宿題
13歳らしく宿題という言葉にすれば可愛らしく聞こえるが、学業に重きを置かず魔法に力を入れている為かこの学園での夏休みの宿題はレポート。
共通課題である『魔法の分類』というドリル(と言っても紙一枚)は、これからの未来魔法がどのように使われていくか、どうすればよりよい社会になるかの想像力や考察力を見るものだ。
各属性の横に大きい空欄のマスがあり、そこに各々が思う魔法の利用法を書いていく。
他にも基礎魔法が一覧となっており、それも先と同じく何か別の用途に使えないか埋めていくだけのシンプルなものだ。
「(シンプルだけど終わりがない。書こうと思えばいくらでも書き続けられる宿題。)」
もう一つは一般的に自由研究と呼ばれるものと同じなのだろう。
『魔法研究』と銘打って何でもいいから魔法について独自の研究結果をレポート用紙5枚以上で表現しろというものだ。
二つしかないものの、夏休みの宿題というよりも大学の課題に近い課題だった。
「でも宿題見せてって、内容を理解しているのかしら?」
誰もいない、夏休みの期間は防音、防魔をしっかりと張った部屋の中で私はつぶやいた。
普段から連れて歩いているケットシーもアカヤとキヨのやり取りを見ていたため苦笑していた。
アカヤがキヨの宿題を丸写しにするつもりか、参考程度にするのかは分からないがどちらにしても個人の意見を求められている今回の宿題でそれは無意味だろうと思った。
仮に見せてもらい、参考程度にとどめたとしてもそれはキヨの意見である。
アカヤの宿題がほぼほぼ完了しており、他の人の回答が気になるというのなら問題がないのかもしれないが、おそらくそうではないだろう。
ただでさえ私とキヨは寮に残っているため図書館の利用が自由にできた。
参考資料に困らなかったため宿題の出来はそれなりにいいはずだ。
「参考程度だとしてもすぐにばれるよねぇ?」
アカヤとキヨでは根本的に考え方が違う。
魔法を攻撃や派手なパフォーマンスで使いたいアカヤと何かを守るために使いたいキヨ。
むしろ正反対の意見は先生でなくとも見ればわかるはずだ。
「ご主人様、ご主人様。ご主人様のレポートは大変素晴らしく。どの研究を提出いたしますか?」
この夏休みの間なにもセージやキヨにかかり切りというわけではなく、私の好奇心のままにこの世界の魔法について様々な研究をした。
異界と現世とそれ以外の世界の定義。
これは先生たちに警戒されそうだからお蔵入りとした。
土魔法の建造物の限界。
自分の属性である土を使い、どこまで耐久性のある大型の建造物が作れるかチャレンジしかけたものの折角ストックしていたキヨの魔力が尽きる気配がしたため途中で断念。図書館の資料などで歴代の魔法使いを調べるほか、あくまで予想値という形で魔法の限界を表現した。
キヨの魔法レベルであれば城ぐらいは作れそうだがあくまで土できた城。住み心地は分からない。
これが一番、学生らしい研究な気もするが誰かと被りそうだなという気もして迷っている。
異能と属性の関係性。
スミレちゃんのように土属性で土を使ったシェルターならばその関係は明白だが、水属性のモモが予知夢、木属性のアオイ君が無効化など関係性の見えてこない異能も多々ある。
それについて水は人の細胞をつかさどれる、木は自然界のエネルギーの吸収が出来るなど出来るだけ多くの異能を調べ法則性を出してみた。
あくまでその傾向が強いというだけで決定打はないものの、なかなかいい出来だと思う。
「いい出来だけど…」
悩んでいるのはこれを提出するのなら私はここに書き加えたいことがあった。
『まだまだ判断材料が少なく、これからクラスメイト達の異能が分かった際には協力を求めたい。』
ある意味、セージへの牽制だ。
このメッセージを読むことで先生たちも『異能を持たないA組の生徒』に違和感を持ってくれるかもしれないという期待もあった。
その反面、セージから警戒又は敵視される可能性もある。
「どうしよっかな。」
安全策をとるか、攻撃に出るか、タイムリミットは迫っていた。




