58.双子の帰還
一週間を予定していた双子の帰省はどうやら本人たちの意思で伸びに伸び、他の生徒たちが帰って来るさして変わらないお盆を過ぎたあたりでようやく学園へと戻ってきた。
あれほどまでに嫌がっていた親族の家で何があったのか、それは聞かなくともアカヤとモモの肌の色を見ればわかった。
「(随分と夏を満喫したようで。)」
子供らしく真っ黒に焼けた肌に満面の笑み。
二人の母親は魔法界について頑なに口にしなかったが、その親戚の人たちも皆魔力を受け継いでいるようで、力の差はバラバラだったが実りある時間を過ごせたそうだ。
特にその親戚の家には幼い魔法使いがいたようで、アカヤたちはまた従妹に当たるその子に魔法について教えたそうで、それがよほど嬉しかったのかアカヤは何度も私たちに土産話とばかりに話した。
キヨの向ける視線がとても冷たいことなど気づくこともなく。
「(そりゃそうだ。行くまでは自分たちも親がいない仲間だ、行きたくないと騒いでおきながら、いざ行ってみれば楽しかった。自分には魔法使いの親族がいるなんてデリカシーの欠片も見当たらない。)」
むしろ清々しいまでの無神経さは私の想像の上をいった。
原作では当初の予定通り一週間で寮に帰った双子。
原作とは違いアカヤとキヨの仲がそれほどまで近くなかったから、アカヤが早く帰らなくてはいけないという使命感がなくなったのか、それともキヨの方から早く帰って来てほしいというアクションが物語の裏ではありそれがなくなってしまったからなのか。
どちらにしてもキヨから頼られなかったこの世界でのアカヤは、そのまた従妹である小さい子供の面倒をみることで自尊心をくすぐられたようだ。
「ってわけで、全然宿題できてなくてさ。見せてくれ!」
断られるとは微塵も思っていないようで、笑顔で催促するアカヤにキヨの視線は一層冷ややかだった。
学生間ではよくあるやり取りだ。
原作では早くに寮に帰ってきた双子とキヨで一緒に夏休みの宿題(正確に言えばレポート)をやっているシーンがあったが、親戚の家に長居した今そんな時間はなかった。
「ごめん、アカヤ。居残り組はもう先生に提出しちゃったんだ。」
困ったように笑ったキヨはそう言ったが、そんな事実はなかった。
少しばかり驚いた私は分かりやすく目を丸くしてキヨを見て見る。
キヨから返ってきたのは目の奥が笑っていない笑顔。
「(合わせろってことよね。)」
別に否定何かしないのに、私も困ったように笑って頷いた。
嘘をつかない人間なんていない。
それでも目の前でキヨがアカヤに嘘をついたことは原作ファンとしては感慨深いというか、自己が確立されたのだなと少しうれしく、同時に純粋にアカヤを慕っていた無垢な少年はこの世界からいなくなったのだと悲しくもあった。
「(まぁ、それは私の勝手な言い分で。)」
生きて今を過ごすキヨに他人である私があれこれ言うことは間違っている。
キヨがどんな人になろうとも私は見守るだけだと口を閉じた。




