56.崩れる人間像
夏休みの間はセージの監視に充てているクー・シーから時々入る調査報告。
「へぇ、幼馴染グループ。ちょっと意外。」
セージはほとんどの日を女子六人、男子三人の幼稚園からの付き合いのある友人たちと毎日過ごしているようだ。
学園でのセージは基本一匹狼のような態度で、会話も「ああ。」「そうですか。」「分かりました。」何て業務連絡の受け答え以外ありませんなんて日もざらにある。
アオイ君とは時々会話をしているのを見るものの、常に一緒にいるわけではなく気づけばいなくなっていると言うことも多い。
アオイ君も特定の誰かとつるむことはなく一見一匹狼に見えるかもしれないが意外と世話好きで、誰かの勉強を見ていたり、話を振れば会話に参加してくれる。
別にセージが寂しそうに見えるってことではないが、アオイ君はただ静寂を好んでいるだけでクラスになじんでいるのに対し、セージは人を寄せ付けないようにわざとそうした空気を醸し出しているから同じ一人と言えど、全く別物に私は見えた。
少なくともアオイ君には気軽に話しかけるクラスメイトも、セージにはそれをしない。
どちらかと言えばアオイ君の方が鋭い目つきやきっちりとした言動でとっつきにくく、セージの少しぼんやりしたようなたれ目で常に眠たそうな柔らかい雰囲気の方が話しかけやすそうに見えるが、子供は意外とその人物の本質を見抜いているのかもしれない。
「(その証拠に本人たちは自身がセージを避けていることに気づいてはいない。)」
洗脳でもなんでもなく、ただ何となく話し相手にセージを選ばないのだ。
「仲良しグループねぇ。」
連日集まれるメンバーだけ集まり、ただ話したりゲームをしたり、ごくごく普通の学生同士の休日を過ごしている。
驚くことにセージの参加率は今のところ100%のようで、関西圏に住む彼の友人たちとの時間はこの夏休みの間だけなのだから分からなくはないが、私の知るセージのイメージ像からは考えられない行動だった。
「(てっきり異界開門の準備でもしているのかと思っていた。)」
そんな彼の当たり前の時間はセージがこちらに帰宅するその日まで続くのだろうと私は予想していた。
そんなある日、グループ内で一組のカップルができたらしい。
私はただよくある展開だなとしか思わず、その報告をただ聞き流した。
その日の夜、珍しくクー・シーは二度目の報告に私の元へと帰ってきた。
*
「ええ?ご両親の魔力を吸収?あのピアスに?」
この休みの期間全く動きを見せなかったセージの突然の行動に私は戸惑った。
「まだ夏休みは終わりではないし、何でいま?」
毎日少しずつなり、帰省前とかのタイミングなら分からなくはない。
ピアスの用途をいまになって知ったという報告もない。
そしてセージの両親は魔力持ちであったが、学園に通うほどの力はなく本人たちも気づいてはいないようだったとクー・シーから報告されている。
「そんな大した力のない相手から魔力を取るって、大丈夫なの?」
今や歩く辞典と化したケットシーに聞いてみれば、彼もセージの行動の意味が理解できないらしく首をかしげる。
「変ですね。変ですね。あまり意味のないものだと思われます。魔道具の試用運転でしょうか?」
以前キヨの魔力を貰うさい、この世界のシステムを見た神様は魔力の発生は血液の循環に似ていると言っていた。
抜いたところでまた新しく生み出される。
ただし多くを抜いてしまうと体に影響を及ぼすと。
元から少ない魔力の持ち主は血液で言う所の血が薄い人たちなのだろう。あくまで魔法使いに限った話ではあるが、健康な人が通常の魔法量だったとして、自身が魔法使いと自覚しないほどに魔力が少ない人の微々たるそれを抜き出したとして、体に害はないのだろうか?そう心配になる。
「(ましてご両親。)」
休みの期間中はほとんど家にいないセージとその家族の仲は悪いのだろうか?そう思ったが、クー・シーの報告では特別何か問題があるようには見えなかったそうだ。
「(中学生男子の夏休みってことなら、確かに毎日遊びに行っているとしても不思議ではないけど…)」
でもそれは一般的な十三歳男児であり、セージにそれが当てはまるとはどうしても思えなかった。




