55.失われたエピソード
重苦しい空気。
私は言葉の選択を完全に誤ったと少し気まずくなる。
キヨはアカヤに出会いこの世界で普通の学生生活を望み六年近くの学園生活を歩んだ。
それまでの彼は世界に絶望し、自分が生きていると言うことでさえうまく認識できないくらい危うい存在。
だからこそ先生たちの監視もついていたのだろう。
「(でもこの世界のキヨはアカヤとあまり近くない。)」
私がそうしたからだ。
この選択が間違っているとは思わないけれど、キヨにしてみたら生きる目的が未だ見つかっていないことになるのだろうか?
「いや、でも心機一転、新しい生活を望んでかもしれないし!」
取り繕ったように言うが、先に言った言葉の方がキヨの本心なのだろう。
その事実に私が気づいていることが分かってか、無理やり作った笑顔を再び隠しキヨは「えーっとね。」と再び気まずそうに言葉を濁してから「僕ね。」と話し出した。
「人を、ころ、殺したことが、あるんだ。」
そう切り出されたとき、知っていたその事実よりもこの話が自分に語られることに驚いた。
これはアカヤに過去を語るエピソードだ。
なぜ今それを語り出しているのか、それを考えるよりもキヨの顔色がどんどん悪くなっていくし、この話を誰かに聞かれる可能性もあったため私は「場所を変えましょう。」そう提案していた。
「(だってあのまま別れたら、これから避け続けられるに決まってる。)」
*
「なぜ、と、どうやってというのは聞いてもいい話ですか?」
私は神妙に問いかけたが、なぜもどうやってもすでに知っている。
その時の心情もその後の周りの対応も、何だったら先生たちが何を思っていたのかさえ私は物語の文面で知っていた。
キヨの罪の告白を聞きながら私はなぜこうなった?とひたすらにこうなった原因を探していた。
「(私がアカヤの代わりに親友の位置になった?ううん、そんなはずはない。)」
キヨはずっと誰かに自分の罪を話したかったのだろうか?
物語の中では一人でいたかったキヨがいつの間にか学生生活を楽しいと感じ、罪人である自分がそんな感情を持ってはいけないとアカヤを突き放すために語ったはずだ。
「(原作とは違うこの現状もそれなりに気に入って、やっぱり幸せを感じる自分が許せないってこと?)」
しかしキヨの口からはそんな言葉は出てこなかった。
話の流れだって、異世界に行くメリットという質問からどこか遠くへ行きたいという理由を語る上で話が続いている。
「いまも、キヨ君はどこか遠くに行きたいですか?」
「もし僕が恐かったら、もう僕に関わらなくていいよ。それに今の話を誰かに話したっていい。」何て直前に一定キヨは、脈絡なく聞かれた問いに一瞬戸惑っているようだった。
返事を待たずに私は言葉を続ける。
「話しを聞く限りキヨ君に非はありません。一番悪いのは家に押し入った犯人たち。次に悪かったのは周りの大人。」
これは私だけではなく、多くの読者の感想だ。
「キヨが魔法を使えると知ったうえで、最低限の対処法の他何もしなかった魔法界側の問題です。」
私の言葉に「でも」とか「だって」とキヨは言っているが、これは事実だ。
そんな後ろめたさもあるから、先生たちはキヨを腫れ物に触るような態度をとっていたのかもしれない。
「(実際のところは分からないけど。)」




