6.20人の同級生
これが多いのか少ないのか、この世界では分からないが『異能』を持つ人物は少なくとも近くにそれだけいることになる。
この物語は他の学年が出てくることがほとんどなく、正直なところ特出した能力のある者がいないか、本当に他の学年は人数か少ないか、もしくは作者が背景をさほど重要視せずに書き綴ったかと思っていたが、入学式に出て真実を見た。
(普通にいる。)
表の学校ほどではないのかもしれないが、在校生である中学2年から高校3年生までの年齢の子供たちが体育館(にしてはハイテクな研究施設みたいなところ)にそれなりの人数がそこには存在した。
部活動紹介や学校での基本のルールなどを演台で先輩が語る場面に遭遇し、改めてここは物語ではなく、生きた人が存在する世界なのだと実感した。
物語には部活はもちろん、他の在校生も語られることはなくあくまで双子ともう一人の主人公を取り巻く環境だけで進んでいく。
もしかしたら近い未来訪れる最初の事件で、主人公たちのいるこの学年だけではなく他の在校生までも多く死傷するのだろうか?結果部活動が行われえることはなく、物語にも登場しなかったのだとしたら、いよいよ私の身の危険も現実味を帯びてくる。
『その場にいる生徒だけではない。教室、校庭にいた生徒までもがあの歪の中に飲み込まれた。何とかして逃れた者もあの境目より向こう側に行ってしまった体はもう元には戻らない、多くの死傷者を前にアカヤたちはなすすべがなかった。』
多くの、という単語だけでそれが自分たちの学年だけとは語られず元々学校生徒の過半数はあちらに連れていかれたのではないかと考察している人もいた。
物語の初期、入学して数か月後のクラス分けの際に起きたその事件は物語の第一巻。
語る前に退場した生徒のことは必然と物語には必要なかったのかもしれない。
分かっているのはこの学年20人(プラス私)がクラス替えの事件でちょうど半分になり、6年時つまりは高3の頃にはたった5人になるのだ。
全員が亡くなったと書かれていたわけではないが、そこまでは詳しく語られていなかったからほとんどが亡くなっていた可能性もある。
少なくとも1年時のCクラスは全滅していたから、クラス分けでそれより上のクラスにはならなくてはいけない。
20人しかいないのにクラス分けと思うかもしれないが、これは基礎授業の話ではなく主に『異能』の指導を受ける際のチーム分けのようなものでクラスを上からS、A、B、C。
Sクラスは能力関係なしに魔力値が高く暴走の危険があるため、常時先生が二人以上監視役として配備される。ある意味問題児クラスとされているものの、魔力量は群を抜いているため将来が期待される特別に選ばれた者ともいえた。
Aクラスは魔力量も多く、力のコントロールも安定し自分の異能がすでに発現されているクラスだ。分かりやすく優秀。
自分の異能とは基礎魔法の他に使えるオリジナルのもので、その力を高めるためにこのようなクラスわけがされている。
B組クラスは力のコントロールはまずまずだが、自分の異能がまだないクラス。
魔力量に関係なくまだ特別な異能がないため、魔力の構築を中心として学ぶ。
Cクラスはコントロールもままならない生徒が集まるため、まずはそこからと言った一番下のクラスではあるが、落ちこぼれという訳ではない。
入学したての生徒のほとんどはこのクラスで二巻を待たずしてなくなってしまった死亡フラグのクラス。
てっきり普段の授業もこのクラスで行われると思っていたが、14時までの基礎授業(最低限の普通教育及び魔法社会における基礎知識)は20人が一緒に受ける事実に、それもそうかと改めて納得した。
知られざる物語の裏設定に少しばかりテンションは上がった。
兎にも角にも私の第一目標はBクラス以上。
そうでないと死亡フラグ決定だ。
どうせなら主人公も愉快犯も一緒に歪に吸収されれば物語は収束するのに、なんて思ったら頭がひどく痛くなり私はその場にうずくまる。
心配してくれる同級生の名前はまだ知らない。
物語は小説だったため主人公たちの顔も分からないが、おそらくは主要人物ではない。
これから死ぬ可能性が高い相手との交流は利益的にも精神的にも望ましいものではない。
この考えは悪意ではないはずなのになぜか頭を締め付ける見えない輪がさらに小さくなった。
悪意とは何か。
クラスわけよりも先に私はその意味にたどり着かないと、スイカを輪ゴムで割るように私の頭も破裂する死亡フラグの方が先に来そうだとため息をつく。




