48.気配の目的
「でも本当にこうも毎日だと段々と気味が悪くなりますよね。」
勉強会メンバーが全員揃っている時、私はあえてその話題を掘り返した。
「あー、確かに。ちょっと慣れてきた感じもあるけど、やっぱり気持ちのいいものじゃないしね。」
そう答えてくれたのは同じ気配に気づいているキヨだけで、女の子二人は首をかしげる。
レオに関して言えばこの話題自体初めて耳にするわけで、何の話だか分かっていないようだった。
「ええ!?あの気配ってまだ続いてたの?」
信じられないとばかりにスミレちゃんは声を荒げた。
「てっきりもう収まったものだと思ってたけど。」
モモもスミレちゃんと同意見だったようで顔をしかめている。
数週間前から続く謎の気配。
その話をした時、二人はとても心配してくれた。それが今もなお続いているとは思っていなかったようでなぜもっと強くいってくれなかったのかと私とキヨは怒られた。
「謎の気配…、それは悪意は含まれない観察、のようなものだろうか?」
私たちの話を聞き、レオは少しばかり考えるようなしぐさをしてから聞いてきた。
「うそ!?レオもなの?」
まるで心当たりがあるかのように言うレオに、スミレちゃんの顔色は悪くなる。
「(やっぱり気づいていた。)」
「いや、もうすぐクラスわけもあるし先生方が僕たちを観察しているのだと思っていたが…」
そう、あの気配の主である先生たちの目的はおそらく九月に行われるクラス編成の参考になるのではないかと私も考えた。
「(ただ)…でも、そんなにあからさまにするものでしょか?」
まるでわざと気配を探らせるように存在を残すその意味は、おそらく見つけてほしいからだ。
「…気配をたどること自体が試験の一環?」
そう、このセリフをレオに言ってほしかったのだ。
私が言ってしまうと、変に印象付けがされてしまう。
このことも先生たちの耳に入れば私の評価はまた変わってくるだろう。
目立つことはなるべく避けたかった。
「ええ、放置しちゃったけどまずかったかな?」
キヨは慌てたように言うが、そもそもモモとスミレちゃんは気配に気づいてすらいなかったのだ別段問題はないのだろう。
「(せいぜい加点対象?)」
「なるほど。確かに少しばかりあからさまだったが皆が皆気づいているわけではないし、己で気づき見つけ出すことで多少九月の試験のプラスされるのかもしれんな。」
その言葉を聞きスミレちゃんの目が輝く、今一番その恩恵を受けたいのは彼女だろう。
スミレちゃんは何としてもレオと同じA組に入りたい。
「一緒に探してみますか?」
原作ではちゃんとA組になれたのだ。私の手助けは本来必要ないはずだがつい、彼女に協力の手を伸ばしてみた。
でもスミレちゃんは首を振って断った。
「気配自体自分で気づかなかったのに、ここでそれを知ったこと自体ちょびっとずるな気がするし、ちゃんと自分で探してみる!」
見た目は可愛らしい少女。
世の中の綺麗なものだけを見て生きてきたように感じるスミレちゃんはその生い立ちゆえ、意外としっかりと状況を把握している。
自分で気配を探れず、ずるをしてA組に入れたとしてもその先はない。そう思ったから自力で見つけると言った。
そしてこのセリフのおかげで、この事実がモモからアカヤの耳に届くこともないだろうと私は予感し心の中でにっこりと笑う。
「では、各々気配の正体を突き止めてみると言うことで。このことは他言無用。何かあればここにいるメンバーに声をかけると言うことで。」
いいですか?とばかりに周りを見れば四人共頷いてくれた。
モモの予知夢はともかく、スミレちゃんの異能では見つけるすべはない。
ただ集中して当りの気配を常に警戒するしか方法はない。
それでも彼女はきっとやるだろう。
私は心の中でスミレちゃんにエールを送り、クー・シーへの本命の仕事を考えるため自室へと向かった。




