46.召喚とは
「つまりあなたたちは私の想像から生まれた具現化物で、実際は召喚されているわけではないと。」
又しても神様の言葉足らずに私はいらだつ。
「いえいえ、召喚には二種類がありましてご主人様のように頭の中にあるものを召喚 具現化する場合といわゆる降霊のように本当に呼び出す、ただこの場合、同次元の物に限りますが呼び出すことは可能です。」
ケットシーの話が本当ならば目の前にいる彼は私が物語を読み、想像した姿。
「なら、あなたには私の求める力はないと言うこと?」
私はケットシーが彼の世界の妖精たちの生態に詳しいから召喚した。
しかしクー・シーが人間嫌いなことは私もすでに知っている。物語に書かれ、私がそう認識しているからだ。
「いいえいいえ、ご主人様は門後当りの裏側を読み解くことがお好きなご様子。呼び出すときにあったかもしれない可能性を乗せて召喚すればよいだけです。」
ニィっと笑うケットシー。
でも彼も私が生み出した存在というのならば、これは今までと同じく私が一人脳内会議をしていることと変わりがないのでは?と思ってしまう。
「(…ん?)」
私が生み出した存在。
「それって、どういうこと?」
紹介したケットシー。
私が読んだ物語のキャラクターではあるが、ここに存在する彼は私の中の想像で生まれた魔力の具現化。
私の分身という訳ではないが、私の中にいたケットシー。
「それって都合よく組み替えられてしまう存在ってこと?今までの受け答えも私が望んだ都合のいい返答で、正解ではないと言うことにならない?」
私の中でケットシーはこういうものだとして生まれたのなら、都合のいい受け答えは竹刀のかもしれない。しかし、この世界の魔法はだいぶ曖昧だ。
分身ではないと理解したものの、ある種のイマジナリーフレンドのような存在だとしたのなら、私が自分を落ち着けるために存在している可能性もあるんじゃないかと疑ってしまう。
「はてさて?」
私の言葉にケットシーまでも首をひねり困ったように目を細めた。
「しかししかし、一つ私に分かることは、クー・シーはご主人様を襲うことはありませぬ。呼び出したのがほかでもないご主人様であり、何よりもご主人様はこの世界の人間でも私たちの世界の人間でもありませんから。」
この残酷なまでの現実。
それはケットシーらしくもあるが、私らしくもあり余計に混乱した。
「まぁ、そう私が認識して生み出した以上、私に危害を加えることはないというのは分かった。分かる範囲でいいわ。教えて。もし私があなたと同じ物語に出てくるバーヴァン・シーをこの世界に解き放ったらどうなるの?」
バーヴァン・シーは物語の中で若者に死をもたらす魅惑的な吸血鬼のような妖精として出てくるキャラクターだ。
ケットシーが召喚できたのだから、彼女も呼び出すことはできるだろう。
物語の中で人間と妖精の争いが始まったきっかけにもなった彼女。
彼女がこの世界に解き放たれれば、被害状況に多少の差はあれど、異界の門が開かれたときと同じようなことが起きるだろう。
「それはそれは。ご主人様の魔力が尽きぬ限りバーヴァン・シーは召喚され続け、彼女たちは彼女たちの狩りをするでしょう。」
ケットシーはにんまりと笑う。
その様子を見て私は安心した。
「(魔力の源はキヨ。彼が生きている限り私の身の安全は保障されそうだ。)」
呼び出す存在にかかる魔力量は実際のところ試してみないと分からない。
しかしバーヴァン・シーに関して言えば、彼女たちは群れで行動し種族的に数が少ないわけではないと認識している。
そのため、呼び出すための魔力もそう多くはないだろうと予想する。
もちろん、彼女たちを呼び出しこの世界を混沌の渦に巻き込みたいわけではない。
あくまで保険だ。
クー・シーは私を襲わない。
きっと頼んだ依頼も速やかにこなしてくれる。
「(それで十分じゃないか。)」
目の前の存在が私のイマジナリーフレンドかどうかはどうだっていい。
キヨの魔力で私の手足になってくれる存在を生み出せる。
その事実だけで今は満足だった。




