44.原作通りの順番
アオイ君の異能はその日のうちに本人から聞くことができた。
クラス中、気になっていたことだったし本人も隠しはいなかったため、あの後行われた確認作業についてもすんなりと教えてもらえた。
花村先生の作った水球はアオイ君が触れることで消滅。
魔法をはじく能力、または無効化する能力だろうとこれから少しずつ確認作業が行われるそうだ。
クラスで初めての異能持ちの誕生に誰もがその後を追うべく、集中して実技の授業に取り組むようになった。
翌日は原作通りレオが前回作った物よりも精巧な武器を生み出し、それに負けじと数分差でアカヤが炎で出来た小さいライオンを具現化した。
ちなみに原作で『小さな炎はまるで子猫のような形を作り、やがて顔の周りに鬣を作った』と書かれていたことから、ファンの間では子猫ちゃん召喚と呼ばれていた。
「(実際は召喚ではなくて炎の構築物ではあるが)」
魔法が存在するとはいえ、戦う場などない現代。
武器など必要としていないことを分かっているはずのレオが剣を具現化したのは、属性が金だったこともあるがこの<異能>と呼ばれるオリジナル魔法は本人の意思とは関係なく、いや全く関係ないこともないのだろうが何もかもが思い通りに行くわけではない。
その証拠にアカヤは原作同様レオの剣を見て羨み、悔しがっている。
アカヤは「なんでこんな小せぇの…」とつぶやき、感情を持たないはずの炎のライオンにかみつかれている。
おそらくは深層心理の現れ。
ずっと後になるが、レオのこの剣は戦う目的ではなく、祓う力を強く宿している剣でのちにやって来る異界の生物との戦いで活躍した。
またアカヤは幼少期猫を飼いたがっていたという回想シーンがあることから、このライオンもそんな思いの表れだと本人も作中で言っていた。
「(そうなると余計魔王召喚何てまずい)」
教師陣から何を企んでいると思われることは必須。
ますます最初に召喚する相手を慎重に選ばなくてはいけない。
そんなわけで今日も基礎練習だけで〈異能〉の訓練ができない。
まだセージの件も謎の気配の正体もつかめていない。
煮え切らないこの状態に気持ちは憂鬱になる。
*
夏休みまで時間がないと言うこともあり、誰もが競うように<異能>を生み出そうと尽力していた。
原作通りの能力が発現したモモはある日『予知夢』を見た。
原作ではアカヤのライオンが大きく成長する夢を見たはずだったが、この世界ではキヨが小鳥の抜け落ちた翼を再生させる夢を見たと言った。
この段階ではまだそれが〈異能〉だと本人すら思っていなかったがその日、他の鳥にむしられたのか大量の羽を失い飛ぶことのできない小鳥を見つけキヨが治すことに成功した。
このことからモモの異能は〈予知夢〉となり、原作とは違ってキヨの異能は〈心霊治療〉となった。
心霊治療という言葉は原作でも何度か出てきた。
異界が開かれたとき、先生たちが「誰か心霊治療できる者を!」と叫んでいたシーンがあった。実際にその力を持つキャラクターが出てきたわけではないが、この世界では存在しているのだろう。
そのとき調べて分かったことは、通常の医療行為によらない病気治療のうち、霊的な力によるものとされる行為ということだ。
実際、今キヨは手をかざしただけで小鳥の翼を再生させた。
「(これは想像以上にすごい力かもしれない)」
スミレちゃんは土で作ったシェルターを生み出した。これは原作通り。
このシェルターは幼いころ隠れたい、人と違う自分を誰にも知られたくないという思いで生み出された悲しい力だ。
最後の戦いでレオを庇い、彼をシェルターに避難させたため無防備なスミレちゃんは命を落とした。
ひと一人だけならばどんな攻撃からも守ることのできる鉄壁のシェルター。
あのシーンを思い出し、私は少し泣きそうになる。
モモの能力は母親が事故死したことを今でも悔やんでいるからだ。
もしも自分に予知能力があったら、何て具体的なことを思ったわけではないだろうけど、何か防げるすべを持っていたならとその能力を手にした時、キヨに語っていたシーンがあった。
「(私もいい加減、異能を発現させないと…)」




