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私と神様は相性が悪い  作者: 壱花
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*神様の不安



彼女に能力を与えることに不安がなかったわけではない。

言ってはいないが、この世界に属していない彼女に与えた力は私たちの持つ別次元の力であり、やりようによってはこの世界を破滅へ導くことも可能だ。

こんなこと仲間たちに知られればどれほどまでに叱咤されるか分からない。

もしかしたら私と彼女だけではなく、あの世界まで処分対象とみなされる可能性があった。


「(それでも私が彼女に力を授けたのは…)」




悪質な心を持って生まれ、彼女自身は何もしていないとしてもそういう感情は伝染し彼女の周りはいつも負の感情であふれていた。

そんな中、彼女だけはなぜか無傷で表向き綺麗な感情だけを周りには見せていたちぐはぐの子。

その上、変に潔癖な面を持っている彼女は善悪の指針が極端だ。

彼女からすれば神である私も悪と判定され、一点の曇りも許さないその善への信仰心はもはや狂信的と言っても過言ではない。


間違いを許さず、汚れを嫌い、まっすぐなまでに美しいものだけを彼女は善とする。

だからこそ彼女は自分を善だとは言わないし、私のことも善だとは思いたくないのだろう。


そこまで完全な善は存在しない。

それと同じように完全な善と悪を持つ者は存在しないはずだった。

彼女は善と悪を50対50で持つ異質な子。

善を50持つことも人にとっては稀なことで、悪を50持つことは危険なことだ。

ほとんどの人間はそのどちらでもない曖昧な感情を持って生まれて生きている。


おかしなことに彼女は無意識のうちにそれに気づいているようで、心の中でさえ彼女は自身を偽りまるで普通の人間のように振舞う。


今は私が心の中を読んでいると知っているからの行動と思われるかもしれないが、彼女は死ぬ前も今と同じように自身を偽り心の中で時々嘘の証言をするのだ。


ほとんどの場合、彼女が迷うことなんてないし、困ることもしない。

彼女の言う『どうしよう』『困った』『分からない』はすべて嘘である。

彼女は仮に謎に直面しその答えが分からなくとも気にしない。別に答えを必要としていないからだ。


私たち天界の住人が表面上の心の声だけをきいると彼女は思っているかもしれないが、それは大間違いだ。




そう、彼女はいまも嘘をついている。



彼女は自身が悪と判断した者には悪意しか返さない。

そして善人という判断はめったにせず、代わりに自身の懐に入れたものにだけ善意を返すのだ。


「(あの時もそうだった。)」


彼女は死ぬ間際、子供を助けたことを仕方なくと言っていたが彼女はその子供を珍しく善とし命を懸けて助けたのだ。

ただその直前、子供が濡れた傘をすれ違う人に当たらないように気にして歩いていた光景を見ただけ。たまたま出会ったよく知りもしない相手だからこそ、その子供の悪の部分を見つけることなく、偶然見かけた善だけを子のすべてとカウントしたのだ。


全く接点のない他人。

そんな相手を助けた。

自分の命を顧みることなく。


それこそが私の危惧するところであり、それと同時に彼女は確かに善を持つ人と理解せざる負えない明白な事実。



「(そんなあなたの善意にかけたい。)」



人はいつだって変わることができる。

そんな事、本人に言ってしまえば『性善説を妄信している』『神様のお遊びだ』なんて批判的なことを返してくるだろう。


それでも私は今の彼女が恐かった。

少しでも彼女の中が善に傾いてさえくれれば、彼女は普通の人間になるのだ。




もしもこの先、彼女の転生先が天界になったとして彼女が同じ世界に住むかもしれない。その可能性が私は恐くてたまらない。

こんな感情を彼女に知られてしまえば、私は今度こそ彼女に悪だと認識されるだろう。

そんなことになったとしても私は彼女に変わって欲しい。




これは私の身勝手な衝動だった。


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