43.異能の発現
自分の〈異能〉を知ってはいたけど使っていなかったのは、どこに教師の目があるか分からなかったからだ。
まだ誰もそれを発現していない今、最初の一人になることは必要以上の注目を浴びることになる。
この力はこの世界に準ずるものではないらしいし、目立たないことにこしたことはない。
あと___
「(何を召喚するかまだ決めてないんだよね。)」
神様は別次元から何かを召喚しなさいと言ったが、それはどういう意味だろうと考えをめぐらす。
今回もまた言葉足らずの説明不足な力を未だ持て余していると言っても過言ではない。
「(他の次元と言うと元いた世界の何か?伝説上の生き物とか?別作品のキャラクター?)」
最初こそ楽しそうだと思った召喚魔法は意外と何を呼び出したらいいのか難しい。
それに呼び出したとして快く応えてくれるのかも謎だった。
「(仮に前世のゲームに出てきた残虐非道な魔王を呼び出したとして、素直に私にしたがってくれるのだろうか?)」
人間嫌いの魔王が魔力もない私に大人しく従い、ちょっと偵察でもしてきてなんてお願いしても頷いてくれるとは思わないし、従ってくれたらくれたでそれはもう元のキャラクターとはずいぶんかけ離れたものになっているだろう。
『いきなり大きなものを作ろうとか無謀なことをするとエネルギー不足になってどうしようもないことになっちゃうから、まずは小さいものからコントロールを磨こうね!』
頭の中で設楽先生が言った。
「(うん。最初は人間に友好的で大人しめな子を呼ぼう)」
そんなことを考えながら眠りについた。
*
翌日の授業で最初に異能を発現させたのは意外にもアオイ君だった。
この辺の話は主人公三人とレオのことしか書かれていなかったから驚いた。
偶然なのかもしれないが、同じ木属性の子が基本練習として植物を育てていた時、誤って枝を勢いよく四方に伸ばしてしまったのだ。
運悪くその先にいたのがアオイ君だ。
先の鋭くなった枝はもはや武器のようなものだろう。
誰もがその瞬間を見ていたわけではないけれど、慌てる花村先生の声と木属性のクラスメイトの叫びに私も振り返った。
魔力を纏ったその枝はアオイ君に触れるか触れないかの位置で突然しおれたのだ。
花ではなく枝がしおれた。
さっきまでは異常な成長を遂げドリルのようにとがった太い枝が今はしおしおになり細く首を垂れている。
水がすべて失われているのか生命力を感じさせない枯れ枝。
「魔力の無効化…」
そうセージがつぶやいているように見えた。
距離があるため本当にそう呟いたかは分からない。
ただセージの顔からは表情が抜け落ちたかのように無だった。
それがとても異常に見えた。
少しだけざわついたもののけが人はいないし、それぞれが授業に戻っていく。
発端の生徒はアオイ君にひたすら謝っているし、アオイ君も何が起きたのかまだ分からないのだろう。
担当の花村先生がアオイ君に何かを言っている。
先生も彼の力が何なのか分かったようで、手のひらに出した魔力で出来た水をアオイ君に向け何かを言っている。
「こらこら。まずは自分たちのこと!」
設楽先生にそう言われアオイ君たちに背を向けてしまったからその後何が行われていたのかは聞かなければ分からない。
「(いやだな。…来週から夏休みに入るのに)」
セージの動きがまだ何もわかっていないことに私は焦りを覚える。
アオイ君の異能を見てセージは今何を思ったのだろう。
早く、セージの意識をアオイ君と結実からそらさないと取り返しのつかないことになる。
それだけははっきりと分かった。




