42.夏休み直前
元々原作でもアカヤはキヨの地雷を踏んだ。
『息子であるお前がその手でお母さんを止めるんだ!俺も協力する!』
あのセリフをアカヤは何を思って言ったのだろう。
死刑の決まっている結実。
あちら側に戻ろうとする結実を止めることは、彼女を死刑台に送ることとイコールだ。
それを息子であるキヨにさせようとしていることに、アカヤは気づいていただろうか?
結果、闇落ちしたキヨとアカヤが物語の最後の戦い、大一番として描かれた。
あの時のキヨは母である結実が唯一の心のよりどころで、それゆえ周りが見えなくなっていた。
アカヤのセリフの真意はこの際置いておいて、キヨはもっと他に選べた未来があったはずだ。少なくとも普段の彼ならばもう少し冷静だったはずだ。
それほどまでに家族への強い執着を持っていたキヨはこの世界ではまだ、結実の存在に気づいてない。
むしろ先生たちの過保護すぎる言動に感謝しているようにさえ見えた。
「(ああ、それもあったのか。)」
キヨとアカヤの現在の関係は私が邪魔した結果、単純にめぐり合わせがなかったからだと思っていたが、そもそもキヨが母親を知るきっかけとなったアルバムを手にしていないことで、彼は先生たちに不信感を抱いていない。
そのため、あまり模範的とは言えない普段のアカヤの行動を見て一緒に行動することをためらったのかもしれない。
「(規則違反することは恩を仇で返す様な行為になるしね。)」
先生たちの行動にも問題はあったが、考えようによってはキヨを守っていたという好意的な見方もできる。
原作では母親を知り自分への干渉はすべて監視とキヨは判断したが、キヨと結実の関係を他者に知られることは彼の身を危険にさらすわけだから過保護すぎてちょうどいいという意見もあった。
「どっちにしても最終バトルは避けるが吉。」
誰もいない部屋で椅子の背もたれに体を預け伸びをする。
それよりも今、気にするべきはセージの存在だ。
彼はこの夏、関西に帰省すると言っていた。
いま下手にアクションを起こし、彼に考える時間を与えるよりも何もしないで策を練った方がいいのは分かっている。
「(でも、この休みの間にセージが動き出さないとも限らない!)」
物語はあくまで主人公三人の目線で描かれている。
その陰で起きた出来事は書かれてなければ知りようもない。
「(セージが盗んだものだけでも手に入れば…)」
それを入手できたとしてセージが止められるのかと問われれば否だ。
それでも何も見たか分かれば、多少何を考えているのか分かるかもしれない。
この時すでにセージが異界への門を開こうとしているのか、その判断基準が今は欲しかった。




