41.家庭事情
そう、この世界で私には家族がいない。
当たり前だ、住んでいた世界が違う。
入学してすぐのことだ、三浦先生に「これまで大変だったな。」と言われた私は何のことかわからず、きょとんとしてしまった。
先生との会話の中で何となく私がこの世界では天涯孤独の孤児、しかも魔力を持っていたため、周りで起きる不可思議な現象を気味悪がられ隔離され、施設で軟禁状態だった可哀想な子ということが知れた。
「(いや、知らない知らない、そんな設定。)」
相変わらず報連相の出来ない神様に呆れつつ、その場は何とか話を合わせ部屋に戻ってから私は神様に対し頭の中でありったけの罵詈雑言を投げかける。
この時はまだ痛みと殺意の関係を知らなかったが、そんなことは無視して勢いのまま数多の中で叫んだ。
神様の言い分としては、私がこの世界で生きてきた証がないためどこかで隠されていた存在としたらしい。
その辺はこの世界へ転生させた神様が何とかするべきところな気がしたが、そう都合よくはいかないそうだ。
曰く、なかったものを過去に存在させる作業は次元を歪める原因だそうで天界の規則上ルール違反なるらしい。
「(それならそれで、先に言っとくべきでしょ。)」
私は私の現状をまるで理解していなかった。
ある日突然この世界へ落とされて、謎の枷をはめられ『良い子になるのです』なんて、あまりにも無茶苦茶だ。
もし私が前世よりも性格が歪んだとしたら、それは間違いなく神様のせいだ。そう断言できた。
*
出生届も出されておらず、生まれてすぐ魔力を持って生まれた子を気味悪がって実の両親は私を施設の前に置き去りにした。
施設でも力の制御の出来なかった私は気味悪がれ、監禁とまではいかないが部屋の一室に押し込められ、基本そこから出ることは許されなかったようだ。
それを偶然火神先生が知り、一年前学園入学の手続きをしてくれたらしい。
ただ施設としては病弱な子を外に出せなかっただけで虐待の事実はなく、学園への入学も本来入る年、中学生になってからと言って事前保護にはならなかったそうだ。
実際怪我をした様子もなく魔法使いによる監視の元、その施設に私は身を置いていたらしい。
その辺は記憶を操作する魔法使いがどうにかできなかったのかとか思わなくもないが、実際にはその頃私はまだこの世界にいないわけだしその辺りはご都合主義ってことなのだろう。
むしろ、火神先生の記憶をいじることは神様的にありなのかというツッコミを入れたかったが、ひと一人の数時間分のそれは許されているそうで天界とはずいぶんルールが曖昧だなと私は思った。
とにもかくにも、天涯孤独の私はよく倒れることも相まって先生たちからキヨと同じように過保護気味に見守られている。
そのことをわざわざ周りに話したりはしないが、別に隠しているわけでもない。
だからモモとスミレちゃんとの会話の中で家族について話すときにこのことは言った。
「(そんな理由もあって彼女たちも私をよく気にかけてくれた。)」
*
「そう、だったんだ…」
両親がいないのはモモたち双子もそうなんだけど、キヨは天涯孤独という私に共感を覚えてくれたようでさっきまで苛立っていた様子を抑え、落ち着いたようだ。
「でも、まぁ、うん。悩んでも現状は変わらないしね。」
苦笑いをして私は言う。
正直なところ私はキヨに共感はできない。
言いたくはないがむしろアカヤの気持ちも分からなくはない。
「(でも…)」
単純に後ろ盾のあるなしでは心の持ちようが違うだろう。
何かあった時、助けてくれる可能性のある人がいるかいないか、その差は大きい。
もちろんその相手の人格は重要になって来るが、少なくとも長期休暇にアカヤたちに帰って来いと声をかけるくらいには善人なのだろう。
「(これをそのまま言うのはあれだし)やっぱり、頼れる人がいるっていうのはそれだけで心強いよね。」
とすべては語らずキヨに言葉をかける。




