39.盗まれたもの
公に発表はされていないものの、アカヤの発言で校内窃盗事件はクラス中が知ることとなり噂は学園中に回った。
それでも先生たちからは何の発信もなく、痺れを切らしたアカヤは先生を直撃するも「ノーコメント」と返されたらしいから隠すつもりはない様だ。
原作にも出てこなかった事件。
私はセージを疑っているけれど、何が盗まれたか分からない状態では犯人の目的も判断がつかなかった。
だから出来心でつぶやいてみたのだ。
「結局何が盗まれたのか気になります。」
あの事件の話をしている時にそう口にした。
別におかしな台詞ではない。きっと誰もが気にしていたことだろう。
その予想通り、私たちは教室でいつ誰が何のために何を盗んだかで話は盛り上がった。
あわよくば、何て気持ちがなかったとは言わない。
「(でもこんなに簡単でいいのか主人公…)」
ありがたいよりも先に呆れが来てしまったのは仕方がないだろう。
話をしたその晩にアカヤは職員室に忍び込んだようだ。
よせばいいのに、その結果を教室で堂々と発表するアカヤは先生に連れられ職員室へ。その傍らには最近一緒にいる森林コンビの姿もあった。
「(キヨは一緒じゃなかったんだ。)」
どうやら昨夜の犯行にキヨは加担していなかったようで、私は原作と違いアカヤとキヨの仲がそれほど進展していないことに安堵する。
「でも生徒名簿、しかも二十年分なんていったい何に必要?」
スミレちゃんの言葉に私はやっぱりセージが結実のことを知って調べているのだと思った。だからレオの言葉に驚いたのだ。
「二十年と言えば先生たちの在学期間に当たるだろう。この魔法学校の生徒名簿だ。それぞれの属性や異能についても書かれているかもしれない。それなら、九月の試験官や試験内容も予想がつくのではないか?」
「(そうか…!)」
Aクラスに入るには異能を使いこなさなくてはいけない。
だがセージはそれを周りに知られることなく試験を突破しAクラスに在籍していた。
その事実を深く考えず、単純に試験官を洗脳しことをすすめ普段も周りにその力を使っていると思っていた。
私は原作を知っているため、試験内容が一人ずつ行われると知っているからその方法でセージは洗脳していたのだと思っていたが、セージはそれを知らないのだ。
もし、試験内容が全生徒の前であったり、特殊な力を持った教官の元、予告なく事前に判定される可能性があったらセージのしようとしている方法が使えなくなる。
「(そう考えれば事前に探りを入れるのも当たり前よね。)」
原作を知っていたからこそ見落としていた事実に私は反省した。
そしてレオの言葉が事実だったとしたら、先生たちも犯人は生徒。しかもクラス分け前であるこの学年であると考えるだろう。
「アカヤ大丈夫かな…?」
不安そうなモモにキヨは苦笑しつつも励ます。
「職員室の侵入は校則違反だけど、盗まれたものが何かを調べに行ったわけだし犯人じゃないってわかってくれるよ。」
気休めだと言うことは誰もが分かった。
本人が盗まれたものを調べに行ったと言ってもそれを証明する方法はなく、深夜の職員室侵入を成功させたという事実は前回も同様に行ったのではないかと疑われる要因になるだろう。
仮に犯人ではなかったとしても校則違反の深夜の外出、職員室の無断侵入、極秘事項の盗み見とくれば規則違反以前に人として色々駄目だ。
「(でもこれで分かった。生徒名簿には結実を模倣する可能性が出てくるだけの情報が載っていて、これきっかけでセージはあの事件を起こした可能性がある。)」
もしかしたら結実を始め、何らかの犯罪に関わった生徒は分かりやすくチェックが入っているのかもしれない。
何でもっと早くに行動を起こさなかったのか。そう後悔しても遅い。
そもそもどうやってセージの職員室侵入を防げたのか、
「(セージの能力の暴露?)」
余りにも浅はかな自分の考えに頭が痛くなる。
最近は神様からの罰の痛みが減った分、普通の頭痛がよく起こるようになった。
「(癖でもついていたら嫌だな。)」
何て一時的に無理やり現状から目をそらし小さくため息を吐く。




