38.期末試験
三か月と少し、それだけの期間でありながらあまりにも濃い、いや痛い日常は良くも悪くも平凡な日々と慣れ始めた今日この頃。
夏休みを前に私は何かやり残しはないかと、すでに終わってしまった学期末テストを前に少し前ならば絶対にやらなかったであろう、これからの予定とこれまでの出来事を思い返していた。
最初の介入として、キヨに土属性の魔法を選ばせないよう積極的に話かけた。もちろんそんなあからさまにしたわけではないが、結果キヨとアカヤの関係は原作ほど近くなくなった。
その代わりにアカヤが原作でもこの現実でもライバル視しているレオとキヨの方が仲良くなっているというミラクルが起きている。
「(勉強会がいい感じに作用したわよね。)」
私とモモ、それからスミレちゃんで放課後行っていた勉強会にキヨとレオはよく顔を出す。アカヤも参加することもあったが、長時間居つくことはなくすぐにどこかへ遊びに行ってしまうから結果としてアカヤを除くメンバーが勉強会の仲間という印象になったのかもしれない。
原作でキヨがアカヤに執着していた理由はたった一人の友達だからと意味は分かるのだが、アカヤはなぜキヨに執着したのだろう?
学園で初めてできた友達でキヨはアカヤを否定しない。一緒に校則違反して行動してくれて、それから土属性のワープ能力を身につけたから?
「(いけない、いけない。)」
アカヤについて考える思考が逸れて行ってしまう。
このまま考え続けたらテスト時間に倒れるという迷惑行為をすることになるため、思考を無理やり停止する。
「(これがこの数か月で学んだ対処法。)」
二人の関係はとりあえず置いておいて、現在アカヤはクラスで運動好きの男子、林君と森田君という原作では名前の載っていなかった彼らと行動を共にしていることが多い。
彼らとアカヤについては頭痛が起きる可能性があるから今は考えない。
現在クラス分けのないこの学年は全員で二十一人。
分かりやすいグループ分けとしては、私たち真面目グループが五人。アカヤたち運動系が三人。女子グループが二組、三人と二人。大人しめの男子がよく四人でまとまっていて、残りがセージとアオイ君のように特別グループに属していない人たち。
すでに原作と違ってきているため、これか先誰がどう動くのかは予想がつかない。
「(でも、主人公組がばらけただけ少しはましになるはずよね…?)」
セージの暴挙は止められないかもしれない、でもその後の悲劇はおきないはずだ。
出来ればセージも止めたいけれど、正直彼に付いての行動は主人公目線で語られる原作ではそう多くはない。
「(セージの行動考察組も結構いたけど、私は結実が幸せになる考察厨だったのよね。)」
だからセージ中心のサイトはそこまで詳しくない。
そのことを今嘆いても仕方がないし、考察サイトがすべて正しいとも思わない。
いま私にできることは思考を止めないこと。
「はい、そこまで。」
静寂な空気を破った声は担任である三浦先生ではなく設楽先生。
「(ああ、この人もいたな。)」
先日何者かが学園に侵入し、何かを盗んでいった。
いまだその犯人は分かっていない。
私の中ではセージが犯人濃厚ではあるが、この人もまだシロではないのだ。
そんなことを頭の片隅に残し、回ってきた答案用紙を先生に渡すべく席を立った。




