37.気配
「最近、妙な気配を感じるんだよね。」
勉強会の休憩時間にそう切り出したのはキヨだった。
実技科目が本格化してからは回数の減った勉強会。
夏休み前の小テストに向けて久々に集まった時にぽつりとキヨはそう零した。
「視線、じゃなくて気配ですか?」
普通こういう時は視線を感じるものじゃないだろうか?
思わずそう質問をするとキヨは頷いた。
「今はないけど、一人でいるとき人の気配?いや、魔力かな?何かいるような感じがするんだ。」
おそらく気配は先生たちだろうとあたりを付ける。
結実の息子であるキヨはある意味この学園に保護されているようなものだ。
彼女の息子だとばれてしまえば、魔法界でどんな扱いを受けるか分からないし、彼自身の持つ膨大な量の魔力を狙って何かを企てている者がいないとも限らない。
「(それから…)」
今回の騒動で先生たちは結実が学園に侵入した可能性を考えているのかもしれない。
原作でのこの時期はどうだったかは知らないが、後半結実が表世界に現れたことで彼女が息子である彼に接触して来る可能性を懸念しているシーンがあった。
「(それゆえの監視がキヨにとっては自分自身が危険視されていると思われてしまったけれど。)」
何が盗まれたのかは分からないため断定はできないけれど、たぶん今回の犯人はセージだ。
でも先生たちはそうは思わないだろう。
この学園に結実が潜んでいると考えていれば必然とキヨの周りを固めるのは道理。
「(でも気配を悟られる当りセージがキヨを付けている可能性もゼロではない。)」
この時点でセージがキヨと結実の関係性に気づいているかは謎だし、第三者の可能性もある。
「(そうなってくるときりがないぃ…)」
思わず机に突っ伏してしまうと、モモ、スミレちゃんキヨから心配する声が聞こえる。
「~~~実は私もなんです。最近、妙な気配を感じて。」
そう、なぜこんなに私が思い悩んでいるのかというと私自身キヨと同じ現象に悩まされているからだ。
「え?え?」
「大丈夫なの?それ?」
「ハイバさんも同じ。…これってこの間の事件と関係していたりするのかな。」
それぞれが分かりやすい反応をしてくれたが、本当にどうしていいのか思い悩む。
先生にしろセージにしろ、可能性は低いが結実、それから全く別の第三者。
それらの人がキヨを注視する理由は分かるのだ。
前者三人は結実の息子という理由から、最後の一人は単純な個人の感情か何か。
その人物が私にまで同じ行動をする理由は一体何か?
気配の主が同じ人だとは限らないが『視線』ではなく『気配』としているのだから、おそらくは同じ人、または同じグループ。
個人的感情ならば私とキヨ二人を監視する意味が分からないし、結実に関してなら私は今のところ何もしていない。
そもそも『気配』を子供に悟られるほど甘い人物でありながら、しっぽは掴ませないと矛盾しているところも不気味だった。
「二人はしばらく一人で行動しないように気を付けないさい。少なくとも気配が無くなるか、窃盗犯が捕まるまで。」
そうスミレちゃんに言われ、私たちは目を合わせて頷いた。
ただでさえ考えなければいけないことが山ほどあるのに、この時期に仕事を増やさないで欲しい。
私に魔力が聞かないことは分かっているからいくらかは余裕が残っているものの、物理攻撃をされれば私に対抗する手段はない。
夏休みに入ってしまえばその正体を探す手段は減ってしまうだろう。
だからできるなら夏休みまで持ち越すことはなく、早く窃盗犯と盗んだもの気配の主の正体を掴んでしまいたい。
「(あーーーー、イライラする。)」




