36.静寂は壊される
何日かすれば基礎魔法と言うこともあり、各属性それなりに何かしらを発生させることに成功したようで、学園は午後になると火柱が上がる傍で水のドームが二つ出来上がり、それとはまた別の場所でト〇ロの再現なのか、何か植物の芽がビュンビュンと恐ろしい速さで成長してく。
そして私たち土属性の前は地面がボコボコ、小さいゴーレムだらけの中、異質だったのは隣の陣地にいる金属性だった。
レオは武器を作ったのだろう、手にやたらでかい刃物を持っている。
武器に詳しくないからそれが何なのかは分からないが、やたら湾曲している剣なのだろうか?それはいいとして、もう一人は金塊を大量に作り担当教諭の三井先生を困惑させていた。
「…あ。」
そしてただ一人、何か唸っているような生徒が校庭全体に影を落とすくらい大きい何かを発生させた。
「…ロボット?」
「いや、紙?」
「金色だけど薄っぺらいねぇ。」
「金箔の大きい版?」
私たちはただそう呟いた。
危機感がないのはその大きすぎる金色の何かはやたらと薄っぺらく、風に揺れ今にも飛んでいきそうだったからかもしれない。
「早く消せぇぇ~~~!!」
三井先生の怒号が響き渡った。
この基礎魔法はあくまで自分たちの属性の具現化を目的としている。
だから金塊を作ったとしても、あの薄っぺらいロボットを作っても問題はないのだろう。しかし普通ならばレオが作ったように金属製の武器を選ぶのがこの年頃なのかもしれない。
だから三井先生は金塊に困惑し、大きすぎるそれに叫んだ。
「(お疲れ様です。)」
三人しかいない金属性はずいぶんと個性的な子がいるようで、先生の胸中を察し一方的にいたわった。
生徒曰く、その巨大ロボットはレオの武器により六枚切りにされ地上へと落ちてきた。
「と、いう訳であんな風にいきなり大きなものを作ろうとか無謀なことをするとエネルギー不足になってどうしようもないことになっちゃうから、まずは小さいものからコントロールを磨こうね!」
多分、設楽先生以外もあれを反面教師として締めくくったのだろう。
各属性とも授業を中断し金属性に注視していたが、ようやく自分たちの授業へと目を向けた。
そう考えるとこの属性の現状はなかなか常識的、言い方を変えれば慎重に事を進めるタイプが揃っていたのだろう。
足並みが乱れることはなく、小さな土の山と小さいゴーレムを作る仲間たちに私は心底安心する。
そんな小さなハプニングはあったものの、大きな事件はなく物語上の事件もクラス分けの時までそう何も起こるまいと思っていたから衝動が遅れた。
*
その日はやたらと先生たちが慌ただしかった。
理由を聞いてもはぐらかされ、何が起きているのかは分からず自習がぽつぽつと目立つようになった。
「盗まれた?何が?」
モモが声を上げ、自然とそちらへクラス中の視線が集まった。
「ばっか、声がでかいって。」
そう言ってアカヤは声を潜めるように言ったものの、自習中のクラスは先ほどまでのざわめきと打って変わって静寂が包む。
気まずそうなアカヤ、こんなシーンは物語に出てきただろうか?と記憶を探る。
「あー、…昨日の夜、先生たちが話してるのを聞いたんだよ。」
本当は自分たちだけでその秘密を共有し犯人を捕まえるつもりだったのだろう。しかしクラス中の視線に耐えかねてアカヤは観念したとばかりに話した。
「何を、かはしらないけど厳重に保管しておいたはずなのにって、あれが盗まれたら責任問題だ、万が一模倣犯が出たらどうするってさ。」
セージが禁書を盗み出すのは夏休みが明けてからのはずと、原作を思い出しながら何かずれが生じたのか、はたまたそれとは別の物なのかと私は判断に困った。
異界への扉の開き方が乗っているあの本はいまは禁書扱いになっている。その本を使いセージもクラス分けの際、異界の門を開いた。
「(模倣犯が出たら…?)」
結実と同じ道を歩むことになったらというのなら分かるが、模倣犯という単語があるのなら誰かがその行為をしたという事実を知ることのできるなにかを見て真似をすることで模倣犯と呼ばれる。
「(だったら結実に関して書かれた何かを学園は所有していた?)」
いやいや考えすぎじゃないか?なんて思いつつ言葉の揚げ足をとり私はその可能性を想像する。
原作にはなかった展開。
犯人は本当にセージなんだろうか?
「(そもそもセージはなぜ異界を開こうとしたの?結実のことは知っていた?)」
多くの謎を残し異界へと消えたセージ。
もしかしらこれも描かれていなかった舞台裏であり、物語上ではあり得た流れなのかもしれないと頭が痛くなった。
彼に関しては夏休み中に対策を考えようと少しばかり目をそらしていたため、いま精神的に大打撃を受けている。
後は夏休みを待つだけ、なんて思っていた穏やかな日々はこの謎の事件により壊された。




