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私と神様は相性が悪い  作者: 壱花
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4.いったいどうしろと?



読者ではなく住人としてこの場所にいる私は一体どうしたらいいのか?肝心なことを神様は何も言わず行ってしまった。


(あまりにも雑過ぎない?)


私の最後に残っている記憶は19歳、大学二年になったばかりの年だった。

何で死んだのかは分からないが、あの謎の空間に連れられ時間も何も分からない時の流れの中、私は人生やり直しを言い渡された。


曰く『人の不幸しか願えないあなたは、人の綺麗な感情が欠落しています。人はもっと美しく、健やかに生きるべきです。本来のあなたは真面目でありました。今回の死をもってあなたの人生は一度リセットし、新たなる人格としてもう1度生まれ直すべきです。』とのことで、私は神様の哀れみにより可哀想な性格を治すためこの世界に落とされたようだ。


楽しんで過ごせるよう、子供の頃に読んでいた本の世界。

本当に楽しんで欲しいと思ってのチョイスだったのだろうか?

この世界は読む分には楽しいが、その中で生きるには少々過酷すぎる。


(あわよくば死んでほしいとか思ってそう)


私がそう思ったものの神様からのツッコミが入らない当り、私の心うちを読んでいないのかそれともこちらに声が届かないだけなのか、考えたところでどうしようもないからこれからどうするべきか私は考える。







そもそも今の私に名前や戸籍はあるのだろうか?

人生やり直しと神様は言ったが、目を開けてすぐに入学式に参加させられている。


あの頭痛の後、私はしばらくうずくまっていた。

そんな私に声をかけてきたのは多分、同じ新入生の女の子で制服が同じことから一緒に学校へ行こうと連れていかれた。

半分はまだこれが夢と思っていたのかもしれない。

私は深く考えず、抗うこともせず、彼女と取り留めのない会話をしながら学校の門をくぐったのだ。



入学式の最中ようやく自分の置かれている立場に気づいた私は、いったいこれからどうすればいいのか途方に暮れていた。

性格を強制されるような枷をつけられ、本来登場しない物語のキャラクターになりこの場にいる。



物語通りに進めるのならおそらく私は一年と待たないうちに大けがを負って学園を去るか、最悪死ぬことになるだろう。


(やっぱり死ねってこと?)


そう再び思ったとき、辺りは光に包まれた。







「そうではありません!」

そう言って現れた神様を前に私はやっぱり心のうちを除かれていたのだと、少しばかりの軽蔑と大きな諦めをため息とともに出した。


「違います。ちゃんと話しますから結論づけないで一度聞いてください!!」


余りにも必死な神様に思わず笑いそうになると、自動的に頭は絞めつけられた。


(神様への反抗心はすべて罰なのか)


「だから違います!」


言葉を口にしていないのに会話ができると言うことは、一周周って便利だなと思うことにしよう。そんなことを考えていれば「だからいったん待って!!」と神様は声を荒げた。




「私はあなたに人を思う優しい気持ちを持ってもらいたいのです!」

その言葉に思うことはあるが、今は何も思うまいと神様を思う優しい気持ちで必死に無を心の中に浮かべた。

神様は何か言いたげだったが、一度目をつぶり話を続ける。


「その世界は確かにあなたが読んでいた児童書の世界です。でもただ物語があるわけではなく、その世界もちゃんと生きた世界として機能しています。」


「次元関係なくこの世界には誰かの人生が多くの物語として存在しています。中には創作物として別次元から読まれることもあります。私たち天界にとってそれは等しく命です。」


「その世界に生まれ直した以上、あなたはそこで生きていくのです。どう生きるかはあなたの自由。物語に沿ってもかまいませんし、そうでなくとも構いません。」


ずっと黙って聞いていたがこればかりは口出ししたかった。


「神様の意思に背いた時点で激しい痛みに襲われます。それなのに自由なんですか?」


結局神様はお人形遊びがしたいだけ。

私にはそう聞こえた。


そんなことを考えていれば、すぐさま神様は表情を歪め首を横に振る。



「違います。それはあなたが悪意を持ったときにのみ発動する枷です。貴方が悪意を持たなければ決して貴方を害そうとはしません。」


悪意を持たない人間などこの世に存在するのだろうか?


「確かに人は生まれながらに悪意を持っています。純真無垢では生まれません。しかし、それはそう言った当たり前の悪意には反応しません。貴方の持っているそれは間違った悪意です!」


間違った悪意とは驚いた。正しい悪意がこの世にはあるのかと私は笑いたくなったが、目の前の神様がますます顔を歪めるから黙った。


(もっとも私には人権がないためこの思考も筒抜けだろうが。)


「心の中を読むのもこの空間でだけです。その枷も当たり前の悪意には反応しません。悪意を向けられ悪意を返す、許せない行為を見て悪意を向ける、それらには私も何も言いません。」


「…?でも、私がさっき頭が痛くなったのは歩きたばこからのポイ捨て、しかも火を消してなかったから、それは許せない行為になりませんか?」

その人の火が小さい子供の肌を焼くかもしれない、その行為がいずれ火事を引き起こすかもしれない、そもそも喫煙者のルールとして違反されている。

なにも喫煙者だから悪意を向けたという訳ではない。

私は自分の中の明確な許せない行為を前に少しばかり悪意を向けた。でも思っただけだ。



「でも死ねばいいとはあまりにも強い悪意です!」



どうにも私と神様には認識のずれがあるようで、会話は一向に交わらずずっと平衡状態が予想された。


(煙草を持つあの指がすべて取れてしまえば、ぐらいだったのならと私は想像した)


必死に首を横に振っているからそれも違うらしい。


罪のレベルと罰のレベルは天界で決まっているのだろうか?

(きっと私が折れるまで神様は納得しないんだろうな)

何か言いたげな神様が口を開くより早く、私は提案する。


「まだ悪意の定義にずれがある気がします。でも考えるだけで痛みがあるとちっとも思索が進まない。ある一定時間だけこの枷を取ることは可能ですか?」


許されないのなら明確な答えにたどり着き私が納得しなくてはいけない。

悪意にさらされ、相手から攻撃を受けてもニコニコしていることなど私にはできないしそれは神様も望んでいないらしい。

だったら一体どこがその線引きなのか、私は今まで考えたことのなかった『許される悪意』とやらの境界線を見定め、それに見合った『正しい悪意』を持たなければならない。


そうしないかぎりずっと死にそうなほど痛いこの枷に私の存在まで支配されることになるだろうから。




その思いが伝わったらしく、神様は私の一日のうちの一時間。夜の22時から23時の間だけ枷を外してくれると言った。


私はその時間を使い、これから殺伐とした生きるか死ぬかの世界に身を投じる。

最後まで神様は悲しげな顔をしていたが、私だっていいたい。


もし本当に優しい子になって欲しいのなら、こんな同級生同士が殺し合うような世界ではなくもっと穏やかで争いのない世界に連れてってくれればいいのにと。



(やっぱりこれは神様による干渉で人間がどれだけ変化するかという実験なんじゃないだろうか?)



目が覚める前、私が思ったそれに対し遠くで神様が叫んでいた。



「だから違うんです!!!!」

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