27.成功する思惑
五行の判定日。それは私だけではなくこれから魔法使いとして生きていく全員にとって運命の日なのだろう。
実技と名は付いているものの、内容のほとんどが座学でやれることと言えば基礎訓練の神経衰弱とスプーン曲げと言う、魔法使いというよりは超能力者のような訓練のみ。
「(もっとも神経衰弱が本当に透視して行われるものだとは思っていなかったけれど。)」
てっきりあれは直感的なものを図る訓練だと思っていたが、目に魔力を集めるようにすれば不思議とカードの向こう側が透けて見えた。
そんなことを言えば服の中も透けて見えるのではないか、なんて指摘は毎年のことなのだろう。
先生はケラケラと笑い否定する。
この訓練に使われているカードは魔法の力を通しし易く作られているようで、普段から服の中はもちろん機密書類の中身やら誰か日記の中身何て普通は見えるものではないらしい。
もちろんその力に特化した者がいないわけではなく、特別メジャーな力ではないが時たまそう言った力を持つ者もあらわれはするそうだ。
「(暗証番号入手とか犯罪にはもってこいの能力だし、見つかれば監視は必須よね。)」
スプーン曲げもイメージの強化が目的らしく、見ているだけで追ってみろと先生は言った。
同学年でそれができたのはアカヤとモモとレオだけ。
その時はまだ自分に魔力がないことなど知るわけもなく、一年生はそんなものだと私は気にしていなかったがのちにその事実を知り、神様を恨んだ。
キヨから魔力を得るすべを得てからはうっすらと透けるカードに感動し、アカヤのようにスプーンの首をねじ切るなんてことはできなかったが、ぐにゃっとぐらいにならば折れるようになった。
ここまではあくまでコントロールの基礎訓練。
五行の判定をするにあたり、ある程度の魔力を一か所に固定できるだけのすべを身につけなけばいけなかったのだろう。
クラス全員のそれを待っていたのか、たまたま時期だったのか五行判定の日はやって来た。
私は自分の属性が何になるのだろうとワクワクしていたが、ふと気づいた。
「(キヨの魔力なんだから、キヨと同じじゃない?)」
私の力はオリジナルではない。
そう気づいたとき、少しばかりしょんぼりする。
「(いや、重要なのはそこではないから!)」
今日私が気にすべきなのは自分の能力ではない。
これから先のキヨの運命が決まる彼の属性選択の行方だ。
「ハイバさんは水と土二つの属性があります。どちらを選択しますか?」
そう問われ、そうだ私もキヨと同じく選択しなければならないのだと気づいた。
「水で!」
結実と同じ属性を選ぶことで変に目を付けられるのはごめんだし、皆の前で散々水属性がいいと言った手前土属性を選ぶわけにもいかず、食い気味で答えた。
ただこの選択はのちに無意味となるが今は関係ない。
「僕は水属性がいい、かな。」
キヨが属性の二つ持ちと聞いてアカヤは喜び、土属性を進めた。
「ゴーレム!ゲート!魔法っぽい能力いっぱいあんじゃん!」
水属性の治癒も十分魔法っぽい能力だったが、アカヤの求める者とは違ったようで原作同様キヨの選択に口出しをしている。
「(そもそも皆の前で判定というのがあまりよくないような。)」
成績発表も廊下に張り出しだし、最近の教育現場としてはずいぶんとレトロな手法のように思えなくもない。
キャンキャン犬のように騒いでいるアカヤにキヨは困った顔をしながら先のセリフを言ったのだ。
原作とは違う、己の選択で本来とは別の属性を彼は選んだ。
「水属性は就職的にも有利ですしね!」何て後押しする先生は彼の母親の存在が頭をちらついているのだろう。いつまでも食い下がるアカヤに「他人の能力に口出ししてはいけない。」といつもよりも強い口調で彼を窘めた。
それぞれ属性ごとに分かれ、キヨは私とモモの姿を確認し安心したように笑みをこぼす。
「ごめんね、アカヤが。」何てモモが代わりに謝り、それ以上は何も起きそうもない状況に私は少しばかり肩を落とす。
「(ここでアカヤがワープ能力が欲しかったのにと喚いてくれればな…。)」
そうすれば彼の状況は一層悪く、キヨとの仲も拗れるだろうと思ったあたりで頭が潰されそうになった。
私はその先にアカヤの死を願ったのだろうか?
ただアカヤの立場が悪くなることが私にとっては都合がいい。ただそれだけだったつもりなのに、いつも以上にいたく感じるそれのせいで私の意識は遠のいた。




