26.私のルーティーン
寮生活というものを私は今生で初めて経験しているが、これがなかなかに悪くはない。
個人の部屋をもちつつもすぐ隣には見知った相手が住んでいる。
親からの干渉はなく、しかし困ったことがあれば寮母さんや先生が助けを求めに行ける距離にいてくれている。
それでいてここは学校であるのだから、光熱費などの心配をすることもなく自由と安心がそこそこに両立できている空間だ。
朝支度をおえ食堂、と言っても少し広いリビングのような場所に行き寮母さんから朝食を貰いその場か自室に戻り食事をとる。
二度手間は面倒で私は食堂で食べるが、一度ラッシュ時間のようなもに当たった際は落ち着いて食べることができなかったため決まって六時にはここに来るように気を付けていた。
「あら今日も一番乗りね。」
この寮には私たちの学年の女子が八人。中二から高三までの女子生徒が十人の計十八人。
少ない女子と言ったものの、私たちの学年は他の学年に比べ女子が多い方だと初めて知った。
始業時間まで自室にいてもいいのだが、私は朝一番にキヨから魔力を貰わなくてはいけないため早々に部屋を後にする。
教室につくのも一番だが、意外と早くにやって来る生徒も多くその中にキヨがいたことには驚いた。
初日からアカヤとギリギリ登校をしていたため、それが通常運転になると思っていたが一週間もすればキヨは一人で登校してくるようになった。
「(喧嘩でもしたのかしら?)」
仲たがいでもしてくれていれば万々歳と思ったものの、そうではないようで休み時間などは普通に会話をしているからこれも知られざる物語の裏側というものなのかもしれない。
「おはようございます。」
最初の頃は飾ってあった花瓶の水を変えるついでに彼の傍を通り挨拶していた。
数日たてば花は枯れるが、その頃には挨拶も当たり前になっていた。
キヨと目を合わせ挨拶をする。
それだけで私は一日分の魔力を彼から摂取することができた。
成績発表前は花の水を取り替えていることですら「いい子ぶりっこ」なんて言っていた子たち。
たかが花の水を取り替えたぐらいで『良い子』と言えるほど、自身の性格が悪いのか私は疑問だった。そしてこんな私を『悪意の塊』と見ている神様の感性にも疑問だ。
この世界に義務教育なる制度はないのか、午前の三時間の授業だけで一般的な普通教科の授業をぎゅぎゅっと詰め込み、午後は実技授業という名の魔法授業だ。
「(これが楽しくて困る。)」
私の目的は魔法を極めることでも、物語の知られざる裏側を覗き見ることでもない。
しかし未知の知識というものはとにかく面白く、実技とは名がついているがまだ座学でしかない魔法の授業が私にはとても魅力的で本来ならば目的のため考えなくてはいけない時間を、魔法の勉学に費やしたり結果それが学年四位に繋がった。
お昼は食堂で受け取る寮母さんお手製のお弁当で、食べる場所は自由だ。
最初の頃は自分の席で一人で食べていたが、最近はモモちゃんたちと場所はその時々で一緒に食べることが多い。
つい日中に嫌なことやアカヤのことを考え頭痛(と言うにはあまりにも痛すぎる)に襲われ保健室おくりになることにも慣れつつ、このおかげで病弱な設定が付いてしまったが最近はその頻度を減らすことに成功。
それらを考えるときは夜の十時から一時間。
この痛みの枷を外れる時間に私はこれからのことを考察することにしている。
ただ誰に見られるか分からないため、メモに残すことはできずすべては頭の中で行われる。そのため計画はなかなかうまく立てられず、その場の思い付きでなることもしばしば。
一時間の間に様々なことを考えるため、十一時になれば速やかに就寝。
前世の十三歳の頃はここまで規則正しい生活を送っていなかった気がするが、そのおかげか朝の目覚めもよい。
「明日はどんな一日になるか…。」
できるならば何事もなくただ学園生活を謳歌させてほしい。
そんなことを願いつつ眠りについた。




