* ずぼらなストラテジー
「先生、卒業アルバムが三冊ほどないのですが貸し出し中でしょうか?」
そう新入生に効かれたとき司書の女は思わず息をのんだ。
彼女の言う三冊はあの事件を起こした『彼女』が在籍していた期間のアルバムで今は禁書扱いだ。なぜその期間の本を新入生の少女が求めているのか、女は態度には出さないように心がけたが、慎重に尋ねた。
「え?いや、特に理由はないんですけどそこだけ抜けているから気になって。なんか揃ってないと気になりません?並べたくなるって言うか、どこかに間違ってしまわれているのかなって。」
なんてことはない、彼女はただ並んでいたアルバムの数字に飛ばされた箇所があった、やや潔癖に思われるかもしれないが確かにきちんと数字をそろえたくなる気持ちが長年司書を務めている女には理解できた。
「ちょっと破けた個所が見つかって、いま修繕中なの。」
慌てて取り繕った女の意見に「そうなんですか。」と少女は食い下がることをしなかったのでほっとする。
揃ってないから気になる。
ないから探す。
この先、彼女と同じ考えを持つ者が出てこないとも限らない。
特に今年は『彼女』の子供かもしれない少年が入学してきたのだ。
その晩、司書の女は慌てて学園長にこのことを話し『彼女』ののっていない新しい卒業アルバム三冊を代わりに並べることとなった。
後日たされている卒業アルバムを見た彼女がパラパラとページをめくり閉じたことに女は安堵する。
彼女は別の本を選び、貸出カウンターに来た。
特別あのアルバムのことを話すこともなく、本当に気になっただけで興味があったわけではないのだと女は判断する。
彼女が「破れた」と言っていた補修跡がないことと真新しすぎる三冊に心の中で『杜撰すぎるんだよ。』と悪態をついていたことなど知らない。




