23.初歩的な作戦
元ネタは何だったか忘れたけれど、有名な言葉にこんなのがある。
『過去は変えられなくても、未来は変えられるんだ』
今更、結実のしたことをどうにかすることはできないしキヨやスミレちゃんの家庭環境を救済することはできない。
なら今の私にできることはこの先起きる事件を未然に防ぐことだ。
最初の大きな事件は九月のクラス分けの時の異界開門なわけだが、それよりも先に小さな事件はちょこちょこ起きている。
それらはその事件の黒幕であるセージに繋がるヒントと、結実に繋がる伏線のための事件だ。
事件というほどでもないが最初は主人公組とレオの衝突だ。これはレオ本人にしてみればただの気配りのつもりなのだろうが、如何せん言葉と態度が相手に威圧感を与え誤解を生んだ。
「こんなことも知らないのか?この本に詳しく書いてある。授業前に予習するといい。」
大人になればわざわざ本まで用意してくれる、親切な子だなぁと受け止めることができるが双子はレオのその言葉に苛立ちを覚え、キヨは委縮した。
そして魔法界に来たばかりなのだから知らなくて当然という言葉と態度が、今度はレオが彼らに対し学ぶ気のない愚か者という印象になってしまった始まりだ。
このやり取りの後、アカヤはレオ対し事あるごとに喧嘩を仕掛けるようになることで、キヨはますますレオから距離を取ってしまう。
(この先、キヨを孤立させないためにもこのやり取りは排除した方がいいわよね?)
次に初めての実技の時間。
アカヤとレオは互いにライバル心を燃やしつつ臨んだ基本魔法五行の適性判断の際、主人公組はやらかすのだ。
五行についての説明は授業でやる時に鍬良く聞けるだろうが、何分作者オリジナルの設定だったため、あまりなじみのないものも多く、はっきりとは覚えていない。
最低限覚えているのは、
火: 炎の具現化、攻撃系
水: 水の具現化、回復・治癒系
木: 植物の具現化、特殊異常付与・解析系
金: 化学物質の具現化、特殊効果付与
土: 土・石などの具現化、自然物による物体の構築
これらのどの力が自分に流れているかを見て、〈異能〉自分だけのオリジナル魔法を構築していく。
もちろんこれはあくまで大きな例であり、火以外の力も攻撃性はある。金ならばスタン系の力を持っているし、土はゴーレムで攻撃してもいい。だからこの場合、火が攻撃性に優れているというよりは、火がそれしか力を持っていないとも受け取れる。
つまるところ、現代において火属性の日常における用途は限りなく低い。
だから何を思ってアカヤが「俺の力が一番強い!」としたか不明で、レオにもその言葉はいまいち響いていなかった。
それよりも重要なのはキヨが水と土両方の力が流れ、アカヤに勧められるがまま土の力を伸ばすと決めてしまったことだ。
血液型と同じような仕組みなのか、両親ともが魔法使いの場合それぞれの能力を引き継ぎ稀に両方の力を持って生まれる子がいるそうだ。
だから二つ力を持っていたことで他の生徒に驚かれ、湧き上がったものの稀ではあるが、問題ではない。
問題だったのはキヨの選んだ<土>属性は、結実と同じ属性だったと言うことだ。
(ここもできれば回避したい。)
これが原因でキヨは教師陣から警戒されるようになり、誤解が加速する。
この授業後、先生たちのこそこそ話をキヨ本人が聞いてしまうのだ。
「やはり彼女と同じ力だ。」
キヨは学園を見つけた際、自分の母は魔法使いだったの教師陣に尋ねたものの肯定されなかったが否定もされないという曖昧な返事をもらった。
それゆえ、学園出身者だと薄々は気づいていた。
この時の発言で母親が学園に在籍していたことを確信したキヨは、唯一の友である双子にその話をしてしまう。
そして図書館で三年間だけ抜けている卒業アルバムを見つけ、この間に何かありきっとそこにキヨの母親もいるのではないかとあたりを付けた。
好奇心旺盛なアカヤと母を知りたいキヨはモモを協力者に卒業生に接触を試みる。
この時、レオとの関係が築けていれば彼の両親から正確な情報を得ることができたのだが物語上そうはいかず、謎の学生が事件当時の話を聞きに来た事で卒業生たちも言葉を濁し、事件とキヨの母親について湾曲した形で彼らが知ることとなった。
ちなみにこの時、三人は無断外出のためさらにレオからの印象は悪くなる。
(隠すから探すのよ。最初から隠すならすべてを中途半端にするから変に拗れるんじゃない。…まぁ、そうしないと物語にならないんだけどね。)
何て心の中でぼやきつつ、私は三冊の卒業アルバムを先生たちに作ってもらおうと画策する。
深層にたどり着くための重要な情報ではあるが、事件を起こさないと決めた以上それらを主人公組に回収させる必要はない。
この後も九月まで主人公組は色々とやらかすが、この段階で彼らを止めることができたなら行動はもう少し大人しくなるはずだと図書館へと足を進める。




