↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と神様は相性が悪い  作者: 壱花
PR
23/207

17.期待と改変



『人の不幸しか願えないあなたは、人の綺麗な感情が欠落しています。人はもっと美しく、健やかに生きるべきです。本来のあなたは真面目でありました。今回の死をもってあなたの人生は一度リセットし、新たなる人格としてもう一度生まれ直すべきです。あなたに一つの枷を加え、やり直すことを許可します』


神様は私に人を思う優しい気持ちを持ってもらいらしく、この言葉と共に私をこの世界へと転生させた。


『どう生きるかはあなたの自由。物語に沿ってもかまいませんし、そうでなくとも構いません』



(それって原作を改変しろってことなのかしら?)


質問していないのにそんなことを言っていた神様の願いは、私が命の危険を顧みず原作では亡くなるはずだった多くの命を救えば満足なんだろうか?


人を思う優しい気持ちという曖昧な感情。

前世の私だって十分持っていたような気はするけれど、どうにも神様は納得していなかった。


ラブストーリーやスポーツものならば、誰かのための行動も別段難しいことではなかっただろう。

しかしここは児童書でありながら人の命がたやすく失われる、ダークファンタジーの世界。

一つの選択で命を落とすことも考えられる。


何で私がいつまでこんなことをグダグダ考えているのかというと、今だ私の向かうべき方向が見えないからだ。


人を思う優しい気持ちがあれば、クラスメイトを見殺しにしてもいいのか?

人を思う優しい気持ちがあれば、結実側につくことも許されるのか?


普通に考えたらダメな気はするものの、神様は自由に生きろと言った。

私がこの物語で好きなのは結実で嫌いなのはアカヤだ。

間違ってもアカヤの手助けをしようとは思わない。

手助けなんかしなくても彼は最後まで生き残るし、好きに生きている。

むしろ主人公組で誰を助けるのかと言われれば、人柱になってしまったキヨだろう。


しかしキヨを助けることはのちの現実世界の崩壊を意味していないだろうかと疑問になる。

この世界も神様にとっては命の一つ。

異界の門を守る者がいなくなったら、この世界は結実の望んだように異界とつながってしまうのかもしれない。


(あくまで可能性ではあるけれど。)


そもそも損得勘定のような気持で誰かを助けるというのも、神様の言う正しい行いになるのだろうか?

何もかもが分からず、何をすればいいのか、誰を助ければいいのか、私は自分の身の振り方を未だ決められずにいる。


それというのも、この痛みが邪魔をして考えが全然まとまらないのだ。


一日一時間ではいつまでたっても答えは出てこない。

ただでさえすでに失敗した感のあるクラスでの立ち位置。

私は一刻でも早く、安定した居場所を確立したかった。



(そもそもこいつが事件さえ起こさなければ物語は動き出さないのよね?)


少し前を歩くセージを見ながらふと思った。

最初の頃の事件は大体彼が企てたもので、結実は関与していない。


(でも後半関わってくるわけだし、どっちにしてもキヨの闇落ちフラグは変わらない?)


でも結実が出てきたのはキヨが彼女を追ったからで、彼女に繋がるヒントはセージとの攻防の中で見つかる。


(事件さえ起きなければ結実に近づけない?いや、でも探そうと思えば学園内に彼女の情報はいくらでもありそうだし、でもなぁ。)


事件が始まらなかった場合、物語はどのように進むのだろうかと私は想像する。


異界への歪が校庭にできなければ多くの生徒の命は守られるだろう。

そこで覚醒するはずのキヨの能力も周りにはばれず、周りからさけられることもなくなるはずだ。

そうなったら、キヨにとって友達はアカヤとモモだけではなくなるかもしれない。


キヨが孤立せず物語が進んだとしても彼は母親を探すだろう。

結実の存在が明るみに出れば、結局キヨは孤立してしまう可能性がある。

でもセージが最初の事件以降、何もしなかったのなら手掛かりは皆無だ。

学園内の結実の情報は秘匿とされ箝口令が敷かれている。


『あの人が帰ってきたんだ。』

『ここに息子がいるからなのか?』


迂闊な先生たちのこの言葉でキヨは結実と自分の関係に気づく。

でも迂闊な人なのだから、事件が起きなくてもうっかりどこかで話してしまう可能性もなくはない。



(まぁ、いつまでも可能性を予想したところでそうなるとも限らないし。)


何も起きないのならそれが一番いいのかもしれない。

元来私は臆病で日々の生活に安寧を求める心穏やかな気質なのだ。



『絶対にありえません!!』

今日も今日とて天上から私を見ている神様は叫ぶけれど、私にはその声が聞こえない。


正義のヒーローになりたいわけではないけれど、きっとこの選択は悪意とは程遠いだろう。


(もし駄目だったら次頑張ればいいか。)


自由にしていいと言われているしと私は肩の力を抜いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。