15.席運ガチャ失敗
段々と増えていくクラスメイト。
私の思惑通り、『自由席』と書かれているが最初の二人が前の席から埋めていくことで後から来た生徒もそれに倣った。
前一列が埋まり二列目。
後ろの席に来た男の子にあいさつをされ私は嫌な予感がした。
真っ黒い少し癖のある髪はぼさぼさ。しかし顔がいいせいでそれすらもセットした髪型のように思えるがよくよく見れば寝ぐせで飛んでいるだけ。
十三才でありながらすでに高い身長と低い声。
(君は背が高いからもっと後ろの方がいいんじゃないかな?)
なんて端から順番に座らせようとしたのは私だったが、彼に関しては自分の体格を見てもらいたかった。
「世良錆二です。よろしくお願いします。」
人当たりのいいような口調だったが、今の彼が標準語二日目であることを私は知っている。
*
私が中学生だったころと違い、この学校の席同士がくっついて並ぶことはなく一つ一つ離れ間がある。だから隣の席と言ってもそこまで近い感じはしない。しかし後ろの席ともなれば話は別だ。
しかもそれが最初に事件を犯す人物だというのだから私は気が気じゃなかった。
ただ私はあくまで物語の背景。本来は登場すらしていなかったキャラクター。
そんな平凡な私に彼が興味を持つわけもなく、会話は挨拶ぐらいなもので休み時間などは各々静かに過ごしているものだから居心地がよく、そして判断を誤った。
読書が趣味のアオイ君とセージ。そして頭痛予防のため意識を本に逸らそうと空き時間には読書をしている私。
クラスは私を含め二十一人。そのうち女子が八人だった。
私とモモともう一人名前の出てくる女の子がいる。
物語内で男女比について正確な描写はなかったものの、モモが『少ない女の子同士仲良くしようね!』というセリフがあったからてっきり二人だけなのかと思っていた。
一年生は男子十三人に女子八人。私が足されている分、元は七人だったのだろう。
少ないと言えば少ないがまったくいないわけではなく、つまるところ最初のグループ作りの機会を完全に逃した。
三日が過ぎた頃にはすでに休み時間に二、三人でまとまっているグループが二つ出来ていた。
今更話しかけに行くには腰が重く、トイレに一緒に行くのはさらに気が重い。
これはこれでいいか何て思っていたけれど、この選択がのちに原作を狂わせる最初の一手となったのだ。
「少ない女の子同士仲良くしようね!」
これは作中でスミレちゃんがモモに言われるセリフだったはず。
それを何でいま私が言われているのかというと、実技練習の時だ。
二人一組になるその時間、アオイ君はセージ君とアカヤはキヨと組んだためあぶれたモモが同じく一人でいた私に声をかけてきたのだ。
本来私と同じ立場にいたはずのスミレちゃんはどういう訳か別の女の子と組んでいて、私という異物が入ったことで物語が少しばかりずれてしまったことに気づいた。
私がいなかったときの女子は奇数で必然的に一人が余った。
それが本来モモとスミレちゃんともう一人の子の三人でこの授業を受けるはずだったのに、私が入り偶数になったことできっかり二人組が出来上がってしまった。
このシーンで本来ならモモとスミレちゃんに軽いいざこざが生まれ、それを見ていたアカヤが首を突っ込み、のちにS組とA組に溝ができることとなるのだが、
(私が相手ではいざこざの原因がない。)
「もちろん。仲良くしてくれると嬉しい。」
授業は滞りなくすんでしまった。
さらに言えばモモとはたまに会話する間柄にまでなってしまった。
(いや、これは想定の範囲内。)
ただ失敗してしまった感はあった。
今クラスで一番よく話す相手がアオイ君、次いでセージ。女子ではモモ。
(完全にメインキャラじゃん…)
本来なら女子のグループにぬるっとお邪魔し、普通の目立たない子として過ごすはずだったのにモモからは「あんまり人と話すのが好きじゃないかと思った。」何て感想を貰うぐらいには一匹オオカミをきめていたらしい。
しかも角席と言うことで隣と後ろがメインキャラクター、せめて近い席で残っていた斜め後ろは名前のなきキャラクターであるが男子。
そんなわけで「男を侍らかしている。」何て声が聞こえてきた。
(いやいやいやいや、入学してまだ一か月もたってないよ?そもそもこんな少人数の学級で敵を作ろうとかしているの?)
私は忘れていた。
中学生という幼さと、女子の派閥の大事さを。
高校生ともなればある程度、身の振り方に気を付けるようになりいくら気に食わなくてもあからさまな態度を取らないし、大学生になればいつでも一緒なんて行動する女子も少なくなる。(いるにはいるけど)
つまるところ私は女子たちのターゲットになってしまったようだった。
(魔法学校でもそういうのあるの?)
それどころじゃなくない?なんて思ったけれど、相手はまだ子供だ。
むしろそれを忘れていた私の方が問題で、前世よりも対人関係のつくり方が下手になったんじゃないか?なんて思ったりした。
(いや、余計なことを考えないためにも誰にも近づきたくなかったのだが本音だけど。)
彼女たちは何をしてくるのだろう。
魔法を使って攻撃してくる可能性はあるのかしら?
明らかにその他大勢女子(と言っても四、五人)から敵意を向けられている私を気遣い、モモが何か言ってくれているが私は笑いそうになる唇をかみしめる。
(どうしてやろう。)
ドロっとした彼女が溢れたとき、数日ぶりの頭痛に襲われる。
まだ具体案を出していないのに神様はせっかちだ。
でも、攻撃されたものを返すのは正当防衛。
攻撃していいのは攻撃されてもいいと思っている人だけ。なんて私が思っていると再び頭はギュウギュウと締め付けられた。




