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私と神様は相性が悪い  作者: 壱花
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14.水戸蒼





私に次いで教室に入ってきたのはおそらくメインメンバーのうちの一人、水戸蒼なのだと思う。

中学一年らしからぬ丁寧な口調と物腰。それは彼の家にいる女性陣の影響を強く受けていると物語に出てきたものの、詳しくは語られていなかったためどう影響を受けているのか分からないが、少なくとも彼以外にこんな物腰のキャラクターは物語に出ては来なかったはずだ。


「おはようございます。自由席と書かれていますが、端から(・・・)座って行った方がいいのかしらと悩んでいました。」

私はそう発言することでこの席を確保し、なおかつ彼に隣に座ってもらおうとした。

正直なところ彼と関わることはあまり好ましくはないものの、アカヤが隣に来るより何十倍もましだ。


さっき思い出したことだが、アカヤとモモは入学式の翌日寝坊をする。それをアカヤの隣の部屋であるキヨに起こされ、モモも連れチャイムと同時に教室に入ってくるシーンが書かれていた。

あくまで情景の一節、数行程度の出来事を正確に覚えているわけではないため今の今まで忘れていたが、もし物語通りならば彼らは最後にこの教室にやって来る。

その時、席がばらけて空いていたら誰がどこに座るか分からない。

私は少しでもアカヤが自分に近づかないようにするため、端から順(・・・・)にお行儀よく座っていますとアピールしたのだ。


案の定、アオイ君(仮)は私の隣に座り改めてと挨拶をしてきた。


「水戸蒼です。今日から宜しくお願いします。」


やはり彼はアオイ君だった。

なぜ私がこんなにも礼儀正しい人と関わることを好ましくないと言ったのかというと、彼が第一の犠牲者だからだ。


もうすぐ死ぬという相手と仲良くできるほど私の肝が据わってはいない。







彼はあの事件で片足をあちら側にと取られてしまった。

その後、学校には残ったものの様々な葛藤があったのだろう。

表面上は誰も気づかずアオイ君は淡々と日々の課題をこなしていった。


義足である足は戦いには不利であったが、日常生活をおくる上では問題がなく後方支援としての力を伸ばそうと本来選ぶべき能力とは別の(戦う)力の生成に尽力していた。


アオイ君の元々の能力は少しばかり特殊で対異界の生物ならば重宝される力だった。


〈相手の能力の無効化〉


これは異界の住人においても適応されることが事件の時に分かった。

適応されたからこそ、異界の生物を倒すまでにはいかなくとも他の生徒を守りながら好戦出来てた。戦えることをアオイ君自身が知ってしまった。


しかし無効化効果のあるアオイ君が攻撃することに意味があり、以前より足に力の入れられない彼ではその能力を持て余してしまう。

彼を盾に相手の気をそらし、その隙に別の誰かが攻撃という選択もあるものの、それはただの囮になるだけさほどのメリットはなかった。


つまるところこの能力は彼自身を守る以外にあまり意味のないものになってしまった。

私ならばこれ幸いと能力を味方に魔法界から逃げ出すが彼はそうしない。


入学時に彼はこの世界で生きていくと決めてしまっていたのだ。


あくまで自分に対してだけなんだろうが頑固なのだろう。

もしくは何かほかに理由があったのかもしれない。



逃げ出さなかった彼は心に少しばかり影を落とした。

嫉妬である。

それを犯人に気づかれ悲劇は生まれた。



犯人はアオイ君を『可哀想だ。楽にしてあげよう。』と一方的な感情を押し付け、彼の能力を奪い、普通の人として表世界に戻すわけでもなく異界へと背中を押した。

能力がなくなったアオイ君が異界で生存している可能性は限りなく低く、物語上もその後語られることはなかったため、読者の間ではそれが犯人にとっての最初で最後の殺人としてカウントされた。


犯人もまたキヨママと同じく、異界を開こうとし多くの死傷者を出したものの直接手を下したわけではない。

だが、背中を押した今回ばかりは殺人だろうというのが読者の総意である。



(つまりアオイ君と関わり、うっかり彼に感情移入してしまうと私の身に危険が及ぶ。)


流石に私が守ろうとか、運命を変えようなんて大それたことは思わないと思うが、死んでほしくないと思うことで私は私が予想外の行動に出ることが不安なのだ。




天界で「そうです!その気持ちが大事です!」何て声がしていたらしいが、私には聞こえなかった。聞こえていたのなら、「やっぱり人の心を勝手に読んでるじゃん!」と非難しただろう。


神様はその口で『プライバシーの侵害はしない』と言った。

それを破ったことを知ったら私は神様とは俗的なものなのだと、やはり私は罪人で神様にとっては約束を守るに値しない人物、いや人と思われていないのだと解釈しただろう。


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