③本文抜粋 天願清墨
『僕に関わらない方がいいよ。キヨは何度も言ったのに双子はめげずにやって来た。この学園に一番長くいるのだからもっとこの世界について教えてくれと楽しげに話しかけてくる。』
『本当は治癒能力を磨きたかった。もしまた大切な人が目の前で苦しんでいたらそれを癒す力が欲しかった。でもアカヤは一緒に戦える仲間が欲しいと言って僕を選んでくれた。
この能力がいいよと、僕に≪転送≫の能力を進めてきた。種類としてワープ、アポート、インベントリ、亜空間転送などが挙げられているが聞きなれない言葉も多い。そしてなんの役に立つのか今のところ分からなかった。
なぜこの能力をアカヤが勧めてきたのか分からなかったが、彼の期待を裏切りたくなく、僕は守護魔法ではなく転移魔法を専攻することにした。』
『僕にはもう母しかいないのだ。
アカヤと違い、兄弟も遠縁の親戚さえいない僕には母しかいない。
会ったこともないし、どんな人なのかもわからない。
なぜ先生たちが探しているのかも知らない。
もしかしたら悪い人なのかもしれない。
だからぼくは監視されているのかもしれない。
それとも僕を監視することで母が来ると思っているかもしれない。
キヨはどんどん悪い方へと想像を膨らませた。
もう何も分からない。
だって誰も教えてくれないんだ。
聞いても答えてくれない。
知るのは早すぎると何かを隠しているのは明らかだ。
僕の母のことなのにと、大人たちに不信感を抱くようになった。』
『先生たちは僕が人を殺したことよりも、僕が誰の子であるかの方を気にしているようだ。
あれだけの事件があったのに世間ではそれがニュースに取り上げられることはなく、僕の元に警察もやっては来なかった。
あの事件の直後、僕が先生たちに言われたことは母の記憶はあるか?写真は残っていないか?手紙など貰ったことはないか?
あれは夢だったのだろうか?
強盗犯は僕の家族を殺した犯人。あんなひどいことをする彼らは人間ではなかったのか?
僕は人の命の重さがよくわからなくなった。』
『監視されているのは僕が人を殺したからだと最初は思った。
調べていくうちに先生たちは僕の母を探していることを知って、唯一の家族である僕に接触して来るのを待っている。だからこの学園から僕が出ていくことを拒んでいるのだと思った。
それが僕を守るためだったなんて思いもしなかった。
真実を知ることで僕が苦しまないように先生たちは隠そうと努力してくれた。
それを探り当ててしまったのは僕自身だ。
でもそれは、母はあちら側にいるのではないかという証明でもあった。』




