80.主人公たる矜持
「ちょっと、待て。流石にそれは」
キヨの発言にレオが慌てる。
それはそうだ、敵の本拠地に単身で乗り込もうとしているのだから。
「(でも)…構って欲しいだけなら、案外うまくいくかもしれません。」
何て心にないことを言った。
私がキヨに期待したのは主人公だから。
心の中でそう思っていることをまた神様に咎められそうだなと思いつつも、これは悪意からくるものではない。
事実、私の頭は痛みを感じなかった。
「構ってほしいって…それであの事件?」
流石にそれはないだろうとスミレちゃんは思ったのかそう口にしたが、ない話ではない。
「(セージに関しては自暴自棄からの行動かもしれないけど)だって何度考えても分からないんです。セージ君があんなことをしでかす理由。」
一線を超える人間と踏みとどまれる人間の差は何だろうか?
「仮に何か嫌なことがあって現実から逃げ出したい。そう思っても私なら周りの人を巻き込まなくてもどこか遠くに行けばいいと思うし、それができないのなら解決策を見つけるか諦める。普通そう選択すると思いません?」
精神分析何て私にはできない。
大学でもそういった方面を専攻していたわけではない。
「魔法がつかえるから今回の事件になった。異界開門は直接誰かに手を下すわけではない。その二つを考えたとき、セージ君のあの事件はいわゆる誰かに構ってほしい問題児の取る行動とも取れなくないのかなって。まぁ、そんなに幼くは見えませんが、幼くないのならそもそも事件を起こすという選択をするでしょうか?」
越えるか踏みとどまれるかの差。
それは理性の発達具合じゃないかと私は思った。
もちろんこの発達は年齢に寄るものではなく、様々な経験による成長度合いをさしている。
「…確かに冷静な判断ができるのなら、普通事件を起こそうなんて思わない。何らかの要因がありそうした行動をとるにしても、予知夢で見たそれは多くの人を巻きこむものだ。その後の影響を考えれば普通選択しない。」
レオは確実に踏みとどまれる人間だ。
自暴自棄にしろなぜその選択を選ぶか心底分からないだろう。
「もし何かがあってすべてが嫌になって起こした事件だとしても、結局はそれを選択するほど幼い。幼い人格が大きな何かを起こそうとする背景には結局のところ誰かに気づいてほしい、構ってほしいという願望があるんじゃないかと思って…」
やっぱり誰かに話しを聞いてもらえるのは頭の中の整理になっていい。
あまりにも幼く見えるセージに落胆を覚えたものの、それならそれで物語の背景を読み進めていかなくてはならない。
「もし私が予知夢を見なかったら、犯人は分からずじまいでその後セージってどうしたのかな?」
ふいにモモはそう聞いて来た。
「気づいてほしいってまた事件を起こすのかな?」
モモの予想通り二度目の事件は起こる。
それが誰かに構ってほしいからなのかは分からないが。
「そっか…セージが犯人にだとしても証拠がない。それなら捕まらないかもしれない。そうなった時、証拠やどうやって異界の門を開いたかよりもなぜそうしたのか原因が分からなければセージは何度だって事件を起こすかもしれない。」
流石に何度も起こすような失態を大人たちがするとは思えないが、キヨはなぜ自分がセージと接触しようとしたのか改めて考え出した。
「(方法は禁書に書かれているだろうし証拠もさほど重要視しないけど)…今ならばまだ起きていない事件。未然に防げればセージ君の罪はなくなる、かもしれないってことですよね?」
私は先生たちにセージを拘束してほしかったが、主人公はそもそもセージを犯人にしない選択を取ろうとしている。
「(回りくどくなる分、危険度は跳ね上がるけど。)」
有無を言わさず拘束、幽閉であったなら事件を確実に防ぐことができる。
もちろん証拠もなしにそれが通用するかは分からないが、一度目の事件で被害者を出さず実行したという事実証拠を突き付けセージを捕らえてほしかったのは私の意見だ。
「(でもキヨは主人公なのだ。)」
彼の判断ならばそう悪い結末にはならないのではないか、そう期待せずにはいられなかった。




