第九章 佐奈恵
「佐奈恵ー? お帰り」
玄関のドアの音に気付いたのか、お母さんが台所から迎えてくれた。
「ただいまー。お腹空いた。今日の夕ご飯は?」
「んー? 豚汁だよー」
いつも通りの会話。家に帰ったらこうでなくちゃ。
もう時計は五時を指していて、リビングの出窓から見える空も、夕陽で染まっていた。出窓の前にテレビが置いてあるので、リモコンを取ろうとすると。
「……えっ、お母さん、これなに?」
テレビの下、前、横に、大量の小龍包!
「あぁ、それー? 小龍包だよ。職場で貰ってきた。もちろん、布で作った本物じゃない小龍包だよ」
「そんなの見りゃわかるけどさ」
まったく、老人ホームで働くお母さんの職場、って、一体何してるんだろう? 前だってよくわかんないけど、折り鶴やら刺繍ハンケチーフやら、いろいろ持ち帰ってきてたし。
「ん?」
よく見ると、小龍包にはかわいい小人ちゃんの絵が描いてあって、一つ一つメッセージ入りだ。
「『その笑顔を大切に!』『素直な心と気持ちと、あと思いやり!』か……」
まるで小人ちゃんがしゃべっているようで、なんだかかわいいと思った。
「これ、全部くれない? せめていくつか」
「うん、いいよー。お母さんいらないから」
案外あっさりした答えに、じゃあもらってこなくていいじゃないか、と苦笑しながら、二階の自分の部屋へ小龍包小人ちゃんたちを運び、ベッドの上へ置いた。ざっと三十はありそうだ。
カバンを降ろし、制服を着替えもせずにメッセージを一つ一つ読んでいた。どれも心がほっこりするもので、誰かにプレゼントしてみるのもいいかもなんて考えていた。
全て読み終え、温かい夕陽の光、気持ちに包まれながら、小龍包小人ちゃんたちをきれいな白いレースの箱にしまった。
ここまで読んで下さるとは!
十話も読んで下さると光栄です!




