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Trick and treat  作者: T.S キャロル
9/22

第九章 佐奈恵

「佐奈恵ー? お帰り」

 玄関のドアの音に気付いたのか、お母さんが台所から迎えてくれた。

「ただいまー。お腹空いた。今日の夕ご飯は?」

「んー? 豚汁だよー」

 いつも通りの会話。家に帰ったらこうでなくちゃ。

 もう時計は五時を指していて、リビングの出窓から見える空も、夕陽で染まっていた。出窓の前にテレビが置いてあるので、リモコンを取ろうとすると。

「……えっ、お母さん、これなに?」

 テレビの下、前、横に、大量の小龍包!

「あぁ、それー? 小龍包だよ。職場で貰ってきた。もちろん、布で作った本物じゃない小龍包だよ」

「そんなの見りゃわかるけどさ」

 まったく、老人ホームで働くお母さんの職場、って、一体何してるんだろう? 前だってよくわかんないけど、折り鶴やら刺繍ハンケチーフやら、いろいろ持ち帰ってきてたし。

「ん?」

 よく見ると、小龍包にはかわいい小人ちゃんの絵が描いてあって、一つ一つメッセージ入りだ。

「『その笑顔を大切に!』『素直な心と気持ちと、あと思いやり!』か……」

 まるで小人ちゃんがしゃべっているようで、なんだかかわいいと思った。

「これ、全部くれない? せめていくつか」

「うん、いいよー。お母さんいらないから」

 案外あっさりした答えに、じゃあもらってこなくていいじゃないか、と苦笑しながら、二階の自分の部屋へ小龍包小人ちゃんたちを運び、ベッドの上へ置いた。ざっと三十はありそうだ。

 カバンを降ろし、制服を着替えもせずにメッセージを一つ一つ読んでいた。どれも心がほっこりするもので、誰かにプレゼントしてみるのもいいかもなんて考えていた。

 全て読み終え、温かい夕陽の光、気持ちに包まれながら、小龍包小人ちゃんたちをきれいな白いレースの箱にしまった。


 ここまで読んで下さるとは!

 十話も読んで下さると光栄です!

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