第十章 学
今日も「月影祭司」に読みふけっていた。一日はあっと言う間に過ぎて、長野に福山 佐奈恵というあの子に会いたい、と言ったのも昨日の話だ。今日もテニス部は運動会練習が関係しているのか休みで、暇なので図書室に来ていた。
「おい森沢」
長野だ。ゆっくりと顔を上げた。
「どうした、長野?」
「うん、あのさ、いいこと考えたんだけど……」
長野はまわりの目を気にする素振りを見せながら、僕の隣に座った。
「今度の日曜、空いてるか?」
「あぁ。ちょうどその日はとくにすることもない。どうかしたのか?」
「うん、よかった。いや、お前を佐奈恵に会わせてやろうかと思って」
予想外の返事に、思わずうろたえ、顔が熱くなるのを感じた。そんな僕を、長野はクスクスと笑った。
「おい、照れんなよ。それでさ」
長野は続けた。
「とりあえずは、俺が佐奈恵を誘う。行先は、街だ。いいか?」
あぁ、とうなずいた。
「そこで、偶然お前も来ていた、ってことにしよう。今日は何曜日だ?」
「木曜日だ」
「じゃあ、土曜日、運動会終った後、お前と佐奈恵にそれぞれ連絡するから、それなりに心の準備をしておけよ」
そう言い、長野はにやっとして席を立ち、図書室から出て行った。
それからしばらくは、口元がひたすら緩んでいた。福山さんに休日会える……。全く本の内容が頭の中に入らなかった。福山さんに会えると思っただけで、こんなにも胸が高鳴るのはなぜだろう?




