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8話
駅前のカフェは、休日で少しだけ人が多かった。
ガラス越しに見えるテーブル席で、かおりは彼氏と笑っている。
向かい合って、スマホを見せ合って、楽しそうに何か話していた。
その光景を、優は少し離れた場所から見ていた。
「……あー」
小さく息を吐く。
完全に終わったやつだ、と頭では分かっているのに。
胸の奥だけが、まだ少し遅れている。
後ろから声がした。
「見てると余計しんどくならない?」
咲だった。
メガネ越しに、いつも通りの顔で立っている。
でも声は少しだけ静かだ。
「別に」
優は視線を外さないまま答える。
咲はその横に並んで、同じ方向を見る。
かおりはちょうど笑っていて、彼氏の方が少し照れたみたいに頭をかいていた。
「……うまくいってるね」
咲がぽつりと言う。
「だな」
優の返事は短い。
少しの沈黙。
咲はちらっと横を見る。
優の顔は、もう怒ってもいないし、笑ってもいない。
ただ少し、置いていかれたみたいな顔だった。
「帰る?」
咲が言うと、優は少しだけ間を置いて頷く。
「……ああ」
その時。
かおりが一瞬だけこちらを見た気がした。
でもすぐに、また彼氏の方へ笑いかける。
優はそれに気づいたけど、何も言わない。
咲はその横顔を見ながら、小さく口を開いた。




