6話
放課後。
教室に残っている生徒も、だいぶ減っていた。
かおりは先輩と一緒に部活に行くらしく、少し照れた顔で教室を出ていく。
その後。
優は机に突っ伏したまま動かなかった。
「……」
咲は少し離れた席から、その背中を見ていた。
周りには普通にしていた。
笑っていたし、「おめでと」とも言っていた。
でも長い付き合いだから分かる。
結構へこんでる。
咲は小さくため息をついて、優の席まで歩いていく。
「帰んないの?」
優は顔を伏せたまま答えた。
「帰る」
「元気ないじゃん」
「失恋したからな」
思ったより素直で、咲は少しだけ困る。
いつもなら、こういう時でも適当に笑うのに。
今日はちゃんと落ち込んでる。
咲は隣の席に座った。
少しだけ考えてから、軽い調子で言う。
「まあ、初恋は実らないって言うからね」
慰めのつもりだった。
でもその瞬間。
優がゆっくり顔を上げる。
「初恋じゃないよ」
咲が瞬きをした。
「……え?」
優は咲を見たまま、何でもないみたいに言う。
「初恋はおまえだよ」
一瞬。
世界の音が止まる。
咲の思考も止まった。
「……は?」
やっと出た声は小さい。
優は机に頬杖をついたまま続けた。
「覚えてない?」
「小学生の時、お前のメガネ取ったことあったじゃん」
咲の心臓が跳ねる。
「……っ」
もちろん覚えてる。
優がふざけてメガネを取って。
返せって追いかけて。
そしたら急に黙り込んで。
意味分かんなくてムカついて。
最後、「大嫌い!」って叫んだ。
あの日。
「その時、普通に可愛いと思った」
さらっと言う。
でも咲は全然さらっと聞けない。
「ちょ、なに急に……」
顔が熱い。
優は少し笑った。
「でもその後、お前に“大嫌い”って言われたから」
「失恋したと思った」
「……はぁ!?」
咲が思わず立ち上がる。
「な、なにそれ!」
「知らないし!」
「俺も知らねぇよ」
優が笑う。
「ガキだったし」
咲は真っ赤な顔のまま固まる。
心臓だけがうるさい。
だって。
ずっと、自分だけが好きだったと思っていたから。
優はそんな咲を見て、少しだけ笑う。
「だから初恋じゃない」
「今回のは」
そう言って、また机に突っ伏した。
タイトル回収回




