4話
放課後。
帰り道。
珍しく、優は静かだった。
コンビニにも寄らないし、いつもの軽口も少ない。
咲は隣を歩きながら、ちらっと横を見る。
「……元気ないじゃん」
「別に」
即答。
でも全然“別に”じゃない。
咲は少し笑う。
「わかりやす」
優は小さくため息をついた。
そして少し間を置いてから、
「……まあ、無理っぽい」
とぼそっと言う。
咲は少し考えてから、なるべく軽い調子で返した。
「でも、まだ付き合ってはいないみたいだよ?」
優がちらっと見る。
咲は肩をすくめた。
「かおり、なんにも言ってなかったし」
「……いや」
優は苦く笑う。
「そういう問題じゃない気がする」
咲は黙る。
優は前を向いたまま続けた。
「見てれば分かるし」
「先輩見てる時、すげー可愛い顔してる」
その言い方が妙に優しくて。
本当にそう思ってるんだな、と分かってしまう。
咲は少しだけ視線を落とした。
それから、小さく聞く。
「……じゃあ、諦めるの?」
優は少し驚いた顔をした。
すぐには答えない。
夕方の風だけが、二人の間を通り過ぎる。
やっと、優が口を開いた。
「どうだろ」
咲が見る。
優は少し苦笑する。
「わかんねー」
その言葉が、少しだけ刺さる。
でも優は続けた。
「でもまあ」
「無理にどうこうしたい感じでもない」
咲は黙る。
優は空を見ながら言った。
「かおり、あの先輩好きなんだろうなって分かるし」
「なんか、あれ見たら邪魔したくなくなる」
その言い方が、思ったよりずっと優しくて。
咲は胸の奥が少し苦しくなる。
(ほんとに好きなんだ)
そう思う。
ちゃんと相手のことを見てる。
だから余計に。
咲は少しだけ笑って誤魔化した。
「……なにそれ」
「いい人ぶってる?」
優は吹き出す。
「いや、たぶん普通にビビってる」
「は?」
「失恋確定っぽいし」
軽く言ってるのに。
その声が少しだけ寂しそうで。
咲も、つられて少し笑ってしまう。
でも胸の奥だけ、少し痛かった。




